メガネに無頓着なのは仕方がない・・・?
「メガネって、掛けてしまうと視界に入らないでしょう。だから、無頓着になりがちなんです」。
これは、私がまだ眼鏡ライターとして駆け出しだった10年ほど前にメガネ屋さんで聞いた話。なるほどなぁと思ったのを、今でも覚えています。
メガネを常用している人なら、朝起きてパっと掛けたら、夜寝るまでお風呂以外では掛けっぱなし。だから、汚れていても気が付きにくいし、少々ズリ落ちていても鏡を見るまで気が付かないことだってあるでしょう。
でも、私は声を大にして言いたい。「無頓着ではもったいない!!」と。
メガネは顔のど真ん中に位置するものです。自分では見えていなくても、メガネを掛けていれば、顔の印象はメガネ込みで作られます。それなのに、残念ながら身だしなみやマナーの項目にメガネが入ることはほとんど無し。本来シャツにシワがあったり、靴が磨かれていなかったりするのと同じぐらい、メガネが歪んでいたらだらしなく見えてしまうのに・・・。
必要なのは、メガネと過ごす日常に寄り添う情報
とはいえ、まぁ、無頓着になってしまうのも致し方ないのかもしれません。というのも、圧倒的にメガネについての情報が足りていない。だから、なかなか意識を向けられないのだと思います。それもこれも、これまで長い間「なるべくなら掛けたくないモノ」として扱われてきたからなのでしょう。
私が眼鏡ライターとして活動を始めた頃に比べたら、今ではファッション誌のスタイリングでメガネが使われることも増えたし、メガネをお洒落として楽しんでいる人が増えたという印象は確かにあります。でも、メガネのデザインが多様になる一方で、メガネの選び方は数十年もの間、相も変わらず顔型との相性で語られ続けているし、メガネを“選んだ後”に役立つ情報に至っては本当に少ない。日々のお手入れやメンテナンス、正しい使い方や“掛けこなし”などなど。意外と知らない人も多いのではないでしょうか。それを証拠に、「メガネ拭きはこまめに洗ったほうがいいよ」と話すと、「えっ! 洗っていいの!?」と驚かれることもしばしばです。
というわけで、このコラムではメガネを使っている人、これから使おうという人の日常に寄り添う知識や情報をお伝えできたらと思っています。メガネについてちょっと調べたいとき、さっと開ける手帖のような存在になれたら幸いです。
伊藤 美玲
眼鏡ライター
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』『眼鏡Begin』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN』『文春オンライン』『めがね新聞』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆している。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』ではメガネの世界の案内人として登場。眼鏡の国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査委員も務める。
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