【後編】RAMBLE METROPOLITAN 2024レポート
前編に引き続き、アイウェアの展示会『RAMBLE METROPOLITAN』の会場をリポートします。こぢんまりした展示会ではありますが、ランブルは台湾のアイウェアメディア“SO! EYEWEAR”や香港の“V MAGAZINE”と提携し、出展ブランドの最新情報が瞬く間に中国語圏や英語圏に広がる、というストロングポイントがあり、特に海外進出を視野に入れた日本ブランドには高いアドバンテージとなっています。
CHECK!!
1.horn-i(ホーンアイ)
バッファローホーンとチタンを巧みに操り、ハンドクラフトとハイテクの世界を融合するのが『ホーンアイ』の得意技。2003年にスモールコレクションからスタートし、徐々に成長してきた誠実なブランドです。以前はIOFTへ出展していたものの、プロダクトをじっくり見て触ってそのクオリティの良さを実感してもらうには、落ち着いた小さなスペースの方が良い、と今回ランブルへの出展を決めたそうです。
メインは繊細に削り出したホーンと質感高いチタンを組み合わせ、スクリューレスヒンジを装備したミニマムなラグジュアリーフレーム。中/フロント:h372-m7-56-15、テンプル:e145 下/フロント:x844-5 & x844-bg、テンプル:g-148、といった具合にフロントの上下とテンプルを組み合わせることができるそう。その対極とも言える変態的なデザインのアートピースも創作するなど、いろんな顔を見せてくれました。
オフィシャルサイト
https://www.horn-i.asia
2.22°Degree Eyewear(22 ディグリー アイウェア)
サステナブルで理に叶った構造、そしてユニークなアイデアで手づくりアイウェアを創造する“デザインモンク”。『22°ディグリー アイウェア』のPazo Hoさんは年齢を重ねるごとに、頑固になるどころか次々と新しい試みにチャレンジする好奇心の塊のような人物です。グルーヴァースペクタクルズやバーンヤードともコラボレーションを実現するなど、5周年を迎えた同ブランドは、ますます感性のエッジに磨きがかかっています。
上から/チタンフロントをアンティークのような質感に仕上げた“N6”。一本のチタンワイヤーを手作業で曲げてつくった骨組みに凹凸のある樹脂リムをプラスした“T2”。ECLIPTIC=太陽の横道をテーマに、その軌道上の惑星を火山石のボールで表現した“T3H”など、樹脂やチタンの3Dパーツやβチタンによるテクニカルな構造のヒンジ&テンプルをもつ、ユニークで機能的なデザインが特徴。唯一無二の世界を表現しています。
オフィシャルサイト
https://22deyewear.com
3.VAANYARD(バーンヤード)
日本では豪州のアイウェアブランドに馴染みがありません。そのため自然が豊か→スポーツ系?などと勝手に連想しがち。ですが、今回ランブルに初参加、そして日本初上陸となった『バーンヤード』は都市部の建築から着想を得たアーバンスタイルのブランド。ディレクターのPaul Gilliganさんもかつてデニムブランドを始めとするファッション産業に身を置いた人で、力強い目元をつくるフレームデザインがカッコいいですね。
上から/Monolith、Velocity、Ultrasonicなど、バーンヤードのアセテートフレームには日本が誇るタキロン・ローランドの8mm生地が使われ、エッジを立たせたカットが特徴。すでに英国やスカンジナビア、米国、南アフリカ、香港と世界を股に掛けて展開しており、22 ディグリー アイウェアのPazoさんとのコラボモデルなどもあるそう。そして彼の勧めもあって、日本でのデビュー戦としてランブルへの出展を決めたそうです。
オフィシャルサイト
https://vaanyard.com
4.CRYSTAL(クリスタル)
自社のレンズ工場で研究開発する、軽量かつ割れにくい高性能の偏光ガラスレンズを標準装備したサングラスブランド『クリスタル』は、ランブル常連ブランドの一つです。彼らのサングラスは“日常=EVERYDAY”や“旅=VOYAGE”をキーワードに、ライフスタイルの中に快適かつ綺麗な景色を提案。クオリティアップのために新しいモールドにアップデートしたり、スプリングヒンジで快適性を向上させたり、と常に進化しています。
また、ディレクターのEdward Chiuさんは日本のサングラス文化をしっかり理解し、通常のコレクションに加えて日本人が好む薄色カラー(透過率30%、偏光率92%)の日本限定レンズを用意。4月からはなんと日本語も猛勉強中とのことで、日本市場に対する意気込みもなかなかにアツいのです。ちなみにフレームのモデル名にも、日本語の言葉の響きに惹かれて“Yoi!”や“KIMURA”といった名前をつけることも多いそうです。
インスタグラム
https://www.instagram.com/crystalrgb425
5.XAZTLAN(ザストラン)
野球や競輪などの競技選手や世界記録を打ち出すアルピニストなどに愛用される“プロ仕様”の機能に、横ノリのストリート感も兼備したスポーツサングラス『ザストラン』。ジワジワと口コミで広がっており、ニュースメディアなどでスポーツシーンの最前線にいる選手たちが掛けている姿を見ると、ちょっぴり嬉しくもあります。さて同ブランドのサングラスはフレームデザインにばかり目が向けられがちですが、実はそれだけではありません。
ザストランのサングラスには、カスタムレンズレーベルの『グッドマン レンズ マニュファクチャー』が開発した高機能レンズが搭載されており、中にはアスリートの体温上昇を抑える効果が期待される“近赤外線カットレンズ”を採用したモデルも。そして今回は前述した『クリスタル』が誇るガラス製偏光レンズをセットした、コラボモデルも登場。展示会での出会いによって、こうした企画が生まれるのもランブルの醍醐味なのです。
オフィシャルサイト
https://xaztlan.com
6.GROOVER SPECTACLES(グルーヴァー スペクタクルズ)
手数の多い東京の伝統的な眼鏡づくりを継承し、それでいて過去に捕らわれずに新しいデザインを生む。『グルーヴァースペクタクルズ』は、ハンドメイドでしか表現しえない複雑なカッティングを用いたレギュラーコレクションに新作が加わり、さらには失われつつある日本の工業技術を投入した『ビヨンド ザ グルーヴァー』から、以前のデザインをブラッシュアップし、ヨーロッパのマーケットを睨んだ限定モデルが3型ドロップされました。
それではレギュラーコレクションから、今回発表された3型をご紹介しましょう。上から/智元の上下に異なるカッティングを施し、表情豊かに仕上がった“PROVOKE”、ブローラインに掛けてのボリューム感と新デザインのコアワイヤー&テンプルをセットした“GEMINI”、蝋石のような、他にはない柄のアセテートを使った“OLMECA”と、またもやトキシックな(=中毒性のある)、新作が誕生しました。
オフィシャルサイト
https://groover.tv
7.MN(エムエヌ)
『グルーヴァースペクタクルズ』のデザイナーに、『ザストラン』のディレクター、そしてランブルのオーガナイザー……といくつもの顔をもつ中島正貴さん。モノづくりやイベント、オシゴトにはさまざまな制約があるものですが、そうした一切から自分を解放して“やってみたかったこと”、“作りたかったデザイン”のあれこれをビジネス抜きでカタチするのが、彼のプライヴェートレーベル『エムエヌ』です。
前回から始まった同レーベル。第一回目はPazo Hoさんと協業した3Dプリンティングのサングラスでした。さて第二回目の今回はバッファローホーンを料理します。フロントは二つとない天然ホーンの表情が生きる丸みのあるシェイプ、テンプルはエッジを効かせて中心を繰り抜きピンストライプを描いたデザイン。以前から親交のあった独のホーンフレームブランド『Freddie Wood(フレディ ウッド)』とのコラボで贅沢な1本が実現しました。
インスタグラム
https://www.instagram.com/mndimension
いかがでしたか? ランブルはブランドを仕切るパーテーション=壁もなく、バイリンガルやトライリンガルの人々も多くて言葉の壁も低め。新しい出会いやジャンルを超えた、さまざまなケミストリーが生まれる空間です。きっと来年もおもしろいことが起きそうな予感。ますます目が離せない展示会へと進化していくでしょうね!
実川 治徳
フリーランスライター
アパレルブランドの店長、プレスを経て2000年からフリーランスライターとして活躍。アイウェアやファッションに特化した記事をメディアに寄稿し続ける。2005年から眼鏡の専門誌として知られるワールドフォトプレス発行の「モードオプティーク」にて、アイウェアの国際展示会SILMのリポートを執筆し、世界中のデザイナーと親交を深める。2016年からはネコ・パブリッシングがバックアップする「V MAGAZINE JAPAN」の編集・執筆を手掛け、世界のアイウェアシーンを発信する。フリーランスのフットワークの軽さを活かし、現在はメガネブランド「GROOVER SPECTACLES」の北米向けセールス&プロモーションを担当。
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