ページが見つかりませんでした – メガネをもっと楽しむ世界を創る「boot」 https://boot.style-n.net "メガネをもっと楽しむ世界を創る"をモットーに、メガネのあれこれや眼鏡Q&Aなニュースサイト。国内外のメガネ情報満載でお届け致します! Mon, 25 Mar 2024 08:12:38 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.3 https://boot.style-n.net/wp-content/uploads/2020/08/cropped-boot_logo-32x32.gif ページが見つかりませんでした – メガネをもっと楽しむ世界を創る「boot」 https://boot.style-n.net 32 32 レジェンドたちの回顧録 後編・オードビー 佐藤吉男さん https://boot.style-n.net/2024/03/memoirs_of_legends_eaudevie_02/ https://boot.style-n.net/2024/03/memoirs_of_legends_eaudevie_02/#respond Mon, 25 Mar 2024 09:00:12 +0000 https://boot.style-n.net/?p=12076 1996年にオープンしたオードビー。オープンまでの経緯を聞いた前編に続き、後編ではサングラスショップとしてどのようにして新たな市場を切り拓いていったのか、また、これからの眼鏡業界について思うことなどを語ってもらった。

 

“わざわざ来てもらえる店”を目指して

小売りの現場を知るため、そしてセイスターの商品力を実証するためにオードビーを立ち上げたとのことですが、なぜそれが“サングラスショップ”だったんですか?


佐藤 それは、サングラスのみという明確なコンセプトが訴求できるからです。最初の店は北上野で、5坪ほどの狭い所でした。どの駅からも結構歩かなくてはいけない不便なところだったんですが、ならばお客さんにわざわざ来てもらえるようなブランドを並べようと思ったんです。当時、“眼鏡は眼鏡屋さん”、“スポーツサングラスはスポーツ用品店”と棲み分けされていたから、それらを一緒に並べたいという気持ちもありました。最初に扱ったのはオークリーやステューシー、そして以前から知り合いだった三瓶氏のフォーナインズ。あと、アラン ミクリですね。

店舗の経験はなくても、魅力的な商品を仕入れられる人脈はあったわけですね。

佐藤 はい。たまたま時期も良かったと思っています。フォーナインズが本格的に販売をスタートし、オークリージャパンが立ち上がったのも1996年。タレックスが直営店のプロショップをスタートしたのもその年だったんですよね。

その頃、来店するお客さんの情報源は雑誌ですか?

佐藤 そうですね。最初は『アングラーズクリーク』という釣り雑誌の取材を受けました。小さな扱いだったんだけど、それを見た他の雑誌関係者がまた取材に来るなど結構反響があって。

当時バス釣りが流行っていたんですが、釣り用のカッコいいサングラスがなかったんですよね。それで、アルマーニや当時大ヒットしたステューシーの「マイケル」というモデルに偏光レンズを入れたりなど、皆がやっていなかったことをしていたらお客さんが来るようになったんです。当初ファッションとスポーツの二軸でやるつもりだったのが、圧倒的にスポーツの需要のほうが多かったですね。

ハイカーブの度付きレンズを自ら作る!?

佐藤 そもそも、当時はスポーツグラスに対応するハイカーブの度付きレンズが無かったんですよ。では、無いならば作ろうと。当時東京にあった根橋レンズ(現:TSL)に相談して、プラスレンズのセミ品はカーブがついているから、それを削ったらできるんじゃないかってことで、スポーツグラスに応用したんです。でも、これまで実例がないから、カーブがつくと度数補正が入るなんてことは知りませんよね。眼鏡と同じ度数で作ったら「クラクラして掛けられない」とクレームを受けたりして。そんなもの売るなと、眼鏡業界から批判を受けたこともありました。でも、実際にお客さんが求めていたら、やるしかないですよね。

その後、オークリー「RX」の海外での作例を見る機会を得て、だんだんわかるようになってきて。日本に上陸するまでは、自分で度数計算をして、レンズも手擦りで対応していました。スポーツグラスっていろいろな形があるから、それに度付きのレンズを入れるのは本当に大変でしたね。

強度近視であるご自身でも試されながら?

佐藤 僕の場合は度数的に作成範囲外の場合が多いから、先ず自分自身が使えるスポーツグラスの開発を始めました。そこで先ほど触れたマーチャンダイジングの考えが活きてくるんです。同じように強度近視で困っている人が必ずいるわけだから、消費者のその要望をくみ取ったものを作っていけばいいのだと。

お客さんの困りごとを解決していくうちに、それが口コミで広がってプロにも頼られるスポーツサングラス専門店へとなっていったんですね。

 

スポーツサングラスの存在を周知させた2つの出来事

これまで、日本のスポーツサングラスシーンが変化したと感じた出来事はありましたか?

佐藤 1998年の長野オリンピックで、スピードスケートの清水宏保さんがオークリーのMフレームを掛けて金メダルを獲ったんですよね。その時は、岡崎朋美さんや堀井学さんもオークリーを掛けて活躍していて。そして2000年のシドニーオリンピックではマラソンのキュウちゃん(高橋尚子)が、サングラスを投げて話題になったでしょう。そのぐらいから、スポーツサングラスの存在が広く認知されたように思います。

それが一つ目だとしたら、二つ目はオークリーが度付きのRXレンズを日本でスタートしたことですね。ちょうどその頃、他のメーカーでもそうした動きがあって、多くの眼鏡小売店でもスポーツサングラスを度付きにできるようになったわけです。

なるほど。お店が扱いやすくなったことで、広がっていったと。でも、すでにその時にオードビーにはかなり知見が蓄積されていたわけですよね。

佐藤 自店のWEBサイトには早いうちからこれまでの作成事例を載せていたので、うちのサイトを見て勉強したという小売店の話も聞きますよ。もちろんセイスターにオードビーの成功情報をすべて提供したので、それでオリジナル製品の開発スピードも速くなっていきましたね。

そうして自ずと、オードビーもセイスターもスポーツに強くなっていったんですね。

 

近所のジョギングから、エベレスト登山まで

改めて、専門店としての強みはどこにあるとお考えですか?

佐藤 かれこれ30年近くやっているので情報の蓄積量が圧倒的に違います。たとえば、これからジョギングを始めたいというビギナーにはもちろん、エベレストに登頂したい、ル・マンに出たいという極限状態に挑むプロに対しても、サングラスを使う場面に関してはアドバイスができるわけです。これまで様々なプロアスリートをサポートしてきて、皆さんが実際の現場で使った感想をフィードバックしてくれますから。もちろん自分たちもスポーツが好きでいろいろな場面でフレームやレンズを試してはいますが、やはりプロにしか体験できないこともあるので。

なるほど。そうした知見こそ強みなわけですね。

佐藤 お店って、出店したら他店とシェアを取り合っていくことになるわけじゃないですか。他と同じことをしていたら自分も取られる可能性があるわけで、だったら新しいシェアを自分で作ればいいという気持ちでやってきました。人の意見は十人十色だから、たとえ人の意見と違っても我が道を行く。強情と言われるかもしれないけれど、その意地こそが自分の個性であり、コンセプトになるんじゃないですかね。

オードビーを始めた頃は、たくさんのコンセプトショップが登場した時代でもありました。

佐藤 オプティシァンロイドやOBJといったコンセプトショップの先駆け的なお店には、従来の眼鏡店にはないかっこよさがありましたよね。その後、コンセプトショップは急に増えていきましたが、人気ブランドを後追いで並べても、それは「本当にコンセプトショップなのかな」と思うことはありました。厳密にいえば、それは“セレクトショップ”なわけですが、セレクトの方向性が無い店も少なくないように感じていました。眼鏡をファッションとして捉えていこうという方向性は良いんだけど、中身が追い付いていない。フォーナインズやアラン ミクリを置いておけばセレクトショップの完成、と言わんばかりで、実際スタイリストやカラーリストを置いたり、メイクの勉強をしたと言えるお店は無かったんじゃないでしょうか。

 

眼鏡はまだ“ファッション”になり切れていない

それでは、佐藤さんは今の眼鏡業界をどうご覧になっていますか? また、これからを担う世代に伝えたいことはありますか。

佐藤 僕は結果的にスポーツがメインになったけど、やはり眼鏡がファッションアイテムとして認識され、伸びていかないと、眼鏡業界は悪くなっていくのではと思っています。僕らが若いとき、「眼鏡はこれから一兆円産業になる」と言われていたんです。理由は、団塊世代の人たちが老眼になり、眼鏡を買うようになるからだと。でも、ならなかった。その理由は、女性が眼鏡を掛けたがらないということですよね。女性って、いくつもバッグを持っていたりするじゃないですか。そうした感覚で取り入れてくれない限り、市場は小さくなるばかりでしょう。

やっぱり眼鏡を‟実用品“とするだけでなく、ファッションなどのジャンルで括っていかないと。そういう意味では、スポーツグラスって“趣味”の範疇なんです。趣味の物って、今日買ってもまた気に入ったものがあれば、次の日も買いに来るということがあるわけですよ。でも、実用品となると、何年も買いに来てくれない。やっぱり、これからも大事なのはポジショニングだと思いますね。

 

【取材を終えて】

今回、佐藤さんに取材をした理由。それは、「道のない所に道を作った人」だと感じていたからです。誰かの真似をするのではなく、道のない所を自分で開拓しながら、歩いてきた人。方向性は違うけれど、それは前回登場いただいたリュネット・ジュラの高橋さんも同じでしょう。

コンセプトショップと聞くと、その時代の人気ブランドをセレクトしているお店を想像しがちですが、きっとそれは単に扱う“モノ”だけで定義されるわけではなくて。以前、別件で佐藤さんを取材したとき、何か“信念”のようなものを感じたんです。その信念こそ、コンセプトなのではないかと。(もちろん、信念が結果的に扱うモノにも表れるわけですが)

そう思うと、コンセプトショップって、あまり簡単に使って良い言葉ではないですね……。人は技術や商品だけでなく、お店の信念に惹かれるのであって、それがなければ「他の店でもいいや」と入れ替え可能な存在になってしまう。これは職種に関係なく同じことであると自戒もこめつつ、改めて考えさせられたのでした。

 
 
オードビー
日本におけるスポーツサングラスショップのパイオニア的ショップ。オークリー、999.9、タレックスなどの日本で一番最初から取り扱うなど、オードビーが日本のメガネ店に与えた影響は大きい。

東京都台東区上野5丁目13−11 第二オリエントビル 1F
03-5816-5090 ウェブサイト

 
 

 
 

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https://boot.style-n.net/2024/03/memoirs_of_legends_eaudevie_02/feed/ 0
レジェンドたちの回顧録 前編・オードビー 佐藤吉男さん https://boot.style-n.net/2024/03/memoirs_of_legends_eaudevie_01/ https://boot.style-n.net/2024/03/memoirs_of_legends_eaudevie_01/#respond Thu, 21 Mar 2024 09:00:34 +0000 https://boot.style-n.net/?p=12070 東京・御徒町にある日本初のスポーツサングラス専門店、オードビー。たしかな知識と技術で、世界を舞台に勝負するプロスリートからも頼りにされる名店だ。

オーナーの佐藤吉男さんは、日本におけるスポーツサングラス黎明期以前よりユーザーのニーズに細やかに対応し続け、試行錯誤しながら新たなマーケットを創出、牽引してきた。そんな佐藤さんに、オードビーを立ち上げるまでの経緯や、現在の眼鏡業界について思うことなど話を訊いた。

 

強度近視に悩まされたアウトドア青年

まずは生い立ちから教えてください。

佐藤 1956年に東京・台東区根岸で生まれました。親父の出身が深川で、母親は浅草だから江戸っ子2代目ですね。いつまでも母親から離れられないような弱虫だったこともあり、小学3年生のときに半ば無理矢理ボーイスカウトに入れられて。そこで、キャンプやスキーを体験したことで、自然に親しむようになりました。初めてのスキーは小学5年生の頃だったんですが、まだ1960年代半ばだから、今のようなスキーウェアなんてないんですよ。それに、僕はすでに強度近視だったから眼鏡で滑るんだけど、吹雪になったら前が見えないわけです(笑)。

小学生の頃から、強度近視だったんですね。

佐藤 はい。高校では山岳部だったんですが、雪山に登るときには自分の眼鏡に安物のサングラスクリップを付けて。でも、夜になると目がシバシバするんです。明らかに紫外線で目がやられているんですよね。でも、それしか無いから仕方なかった。

そうしたご苦労があって、眼鏡業界に入ろうと?

佐藤 いえ、そこは結びつかないんです。当時、叔父が浅草で宝石の彫金をしていて、僕も宝石の仕事をしたいと思っていたんです。ですが、叔父曰く「これからは宝石じゃなくて、眼鏡だよ」と。それで眼鏡の卸しをしている会社に入りました。1975年のことです。

 

眼鏡の卸から東京の眼鏡工場へ

佐藤 その頃は眼鏡業界でいろいろと変化があって、まず眼鏡レンズがガラスからプラスチックに移行し始めました。そしてセルフレームからメタルフレームにトレンドが大きく移っていきましたね。工場はドイツのローデンストック、マルヴィッツ、メッツラーに追いつけ追いこせという時代。

僕がいた会社で扱っていたものだと、村井が作っていたサンローランのサングラスが素晴らしくて、これは良く売れましたね。あとは、山本防塵のスポルディングが人気でした。その会社には約5年いて、その後、東京の眼鏡工場「敷島眼鏡」に入社しました。というのも、その卸の会社に出入りしていた人が、「アイファッションプランナー」という敷島の販売会社を作ったんです。これが、単なる販売会社ではなかったのが、入社の決め手で。そこのトップは、じつはレンズ込みの“一式価格”を眼鏡業界で初めて打ち出した有名な方で。僕は彼から、マーチャンダイジングとチェーンストアの理論を教わることになるんです。「お客さんの声を聞いて商品作りをする」ことが、小売店のやるべきことだと徹底的に叩き込まれました。

工場勤務でありながら、消費者目線を学んでいったと。

佐藤 そうですね。加えて、工場のことを知ることができたのも良かったです。卸し先に営業へ行って「こういうものが作りたい」と言われても、工場長が首を縦に振らないと作れません。それを「うん」と言わせるためには、工場でこうやって流したらどうですかと提言できないと絶対に実現できない。そうしたエンジニアリングセールスを教え込まれたのもこの時代でした。

 

ファッションにおける眼鏡のポジショニングを上げたい


佐藤 その頃眼鏡業界では、1984年にルネッタ バダがスタートし、1985年にはオプティシァンロイドがオープン。世間的にはDCブランドのサングラスが人気を博していました。オークリーがサングラスをやり始めたのもこの頃でしたね。

日本のアイウェアシーンが変わり始める頃ですね。

佐藤 その当時、自分のなかでショッキングな出来事があって。僕、1988年にイタリアの展示会MIDOへ初めて行ったんですよ。まだ日本人なんてほとんどいない時期で、そこで眼鏡がファッションとして打ち出されているのを目の当たりにして。やっぱり今の眼鏡に足りていないのはファッション要素だと、自分を含めて4人で勉強会を立ち上げたんです。

眼鏡やサングラスはファッションのなかでの立ち位置が低いから、まずはベルトなどの服飾雑貨ぐらいまでポジショニングを上げていこうと。そのためには、ファッションブランドにサングラスを作ってもらわなくては。ということで、僕はNICOLEやBIGI、COMME ÇA DU MODEなど、当時の日本の主要なブランドを全部回ったんです。そのなかで、JUNがやっていたDOMONや、当時yoshie inabaのアクセサリー部門だったCUSHKAのサングラスを作ることになったんです。

MIDOで衝撃を受けてからの行動力がすごいですね

佐藤 でも、あるとき某アパレル企業の会議に出席したとき、予算案を見て拍子抜けしちゃって。だって、ベルトが1万、バッグが3万、サングラスが3000円ですよ。もうこれはダメだと思い、それではメイクアップなら可能性があるのではないかと思いました。そこでコラボしたのがshu uemura。メイクアップサングラスとメイクアップ眼鏡というのをスタートしたんです。

1980年代に、そんな先駆的な取組みが。

佐藤 鎌田誠さんというメイクアップアーティストの方が、顔分析というメイクのメソッドを提唱していて。まず顔を4つに分類し、4つのサングラスを彼が考案しました。その分類に応じて、顔に似合う玉型のアイテムをお客様に提案していくというものです。じつは1988年にiOFTで講習会もしているんですよ。

ただ、その頃ワケあって敷島を辞めることになり、結果的にshu uemuraとの取組みはそこで終わってしまったんですよね。本当に残念だったんですけど……。それで、僕は以前から取組み始めていたボランタリーチェーン、「セイスター」を本格スタートさせたんです。

商品力を実証するために店舗をスタート

佐藤 セイスターも最初は勉強会としてスタートし、その後、共同仕入れをするボランタリーチェーンになりました。メンバーは、小売店4店舗と、僕と、もうひとり荒木というメンバーがいて。彼は店舗の内装やチラシ作りができたんで、店の造作から販促まで全部できたんです。で、商品に関するところは僕が担当して、眼鏡店のバックアップをしていました。設立は1990年だったんですが、翌年に荒木が42歳という若さで亡くなってしまって。スタートしてすぐに片輪が取れてしまったわけです。それで、僕が商品を強化していくしかないと。セイスターでないと仕入れられないものがあれば、会員は必然に集まるだろうと腹をくくりました。

その1991年に、オークリーが本国でRXという度付きレンズをスタートさせました。翌年、当時オークリーの代理店をしていたFETという会社から連絡があり、RXを日本でどう展開すればいいかと相談があったんです。

その頃から、スポーツサングラスに詳しい人だと認知されていたからですか?

佐藤 いえいえ、単に知り合いの紹介で。セイスター時代はそんな感じで相談を受けたり、小売店に商品面で協力したりしていたんですが、僕はその時点はで小売の現場を知らない人間じゃないですか。だから商品を語っても説得力に欠けるなと思っていたんです。それに、セイスターの商品力を自ら実証したいという気持ちもありました。そんなとき、うちのカミさんが「あなたも、お手本の小売店やったほうがいいわよ。もう物件見つけたから」と(笑)。そんなひょんなことから、オードビーはスタートしたんです。

(後編へ続く)

 
 

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最高の偏光レンズとは?ガラス偏光サングラスの最有力ブランド「CRYSTAL」 https://boot.style-n.net/2024/03/crystal/ https://boot.style-n.net/2024/03/crystal/#respond Mon, 18 Mar 2024 09:00:43 +0000 https://boot.style-n.net/?p=12032 「最高の偏光レンズとは?」と聞かれたら、「ガラスの偏光レンズ」と回答するメガネ業界人は多いと思います。
ガラスレンズは割れた時に危ないので、最初からプラスチック素材の偏光レンズをおススメする事はあるとは思いますが、ガラスの偏光レンズの見え方はスキっと見えて気持ち良いものです。

何故そうなのか考えてみて下さい。高性能なカメラレンズは今もガラス製。
光学製品のハイエンドなものも、ガラス製が未だに多く使われています。
偏光レンズにおけるガラス素材のメリットは何と言っても解像度。シャキっと見えます。
今でこそメガネのプラスチックレンズも良くなりましたが、ガラスレンズの解像度と透明度には勝てません。そして小傷に強い。ガラスレンズの弱点は、「割れ」と「重さ」です。

販売した製品でお客様が怪我をされてしまうと製造物責任(PL)法に問われてしまう事から、メガネレンズは約30年ほど前からプラスチック化されました。

 

近年、世界のサングラスマーケットで多くのブランドの高級ラインに、ガラス偏光レンズが搭載されてきているのが気になっていました。

ペルソールなどに供給されていたイタリアのバルベリーニ社がガラス偏光レンズでは有名なのですが、台湾の偏光レンズのメーカーが急激にシェアを伸ばしているのを耳にしました。日本の偏光レンズメーカーもかつては健闘していたのですが、現状は開発力で負けています。”輸出専業”と言うくらいの国内メーカーが1~2社だけ頑張っていますが、ほとんど業界人でも知らないようなサプライヤー企業です。偏光レンズのマーケットは圧倒的に海外の方が大きいのです。

 

遂に日本に現れたガラスの偏光レンズブランド「CRYSTAL」


RAMBLE METROPOLITAN 2023で、台湾から「CRYSTAL-クリスタル-」という偏光サングラスブランドが、SO!EYEWEARの推薦により出展してくれました。

[instagram:CRYSTAL]

SO!EYEWEARはアジア圏で最も影響力のある、メガネのオンラインウェブメディアです。SO!EYEWEARについてもどこかで解説しなくてはなりませんが、もう日本のメガネメディアで彼らと渡り合えるところはありません。中国圏に圧倒的な影響力をこの3年で確立しました。SO!EYEWEARは日本ブランドを中心に中国圏へ紹介してくれています。

そんな彼らが是非日本で紹介したいとRAMBLE METROPOLITAN 2023に推薦してくれたブランドが「CRYSTAL」でした。

 

ガラスなのに割れに強い!CRYSTALのレンズ加工技術がまず凄い


Edward氏(写真左)のお父さんが偏光レンズの工場を経営されていて、2018年にCRYSTALは自社製造のレンズを搭載したブランドとして誕生します。

搭載されている偏光レンズは全てガラスです。そして多くのパテントを持っているのですが、とてもビックリしたのが「レンズ加工」の特許です。

製品自体の特長も後ほど解説しますが、ガラスレンズが割れてしまう弱点をレンズカットの技術で乗り越えているのです。レンズ単体で床に叩きつけても割れませんでした。最近のガラスレンズは非常に割れにくくなっているのですが、それでもこのカット技術により全然割れませんでした。

ただポリカーボネート製のように、クラッシュに強いわけではありませんのであしからず。

 

レンズ表面のミラーレンズもキズが付きにくいというか全然付きません。
通常のミラー層は一番表面にくるのですが、ゆえに傷が付きやすく傷が付くと修理する事が出来ません。CRYSTALのレンズではミラー層の上から更に保護するコーティングがされています。インナーミラーと言う製法なのですが、これも凄い魅力です。有名な国産偏光メーカーで、このインナーミラーを採用しているブランドはありません。

トリプルコントラストの鮮やかな視界


クリスタルの偏光レンズのカラーはグレーベースが多いのですが、赤や緑が非常に鮮やかに見えます。通常グレーベースのレンズカラーは色の再現に忠実で、コントラストがあまり出ないのが特徴です。
しかしクリスタルのガラス偏光レンズは、グレーであっても綺麗なコントラストを実現します。オークリーが「プリズムレンズ」と言うコントラストレンズで、グレーをリリースしていますが比較にならないほど素晴らしいコントラストです。

これにはガラスレンズだから出来る秘密があるのです。

 

ガラス素材だから出来る波長抑制


ガラスレンズは波長コントロールに使う鉱物が使いやすい特徴があります。いわゆる「混ぜ物」です。プラスックレンズは極端な波長コントロールを出すために、膨大な量の染料剤やコーティングを開発しなくてはなりません。プラスックレンズも薄型化するために色んな物質を混ぜるのですが、レンズ自体が光ってしまったりこれがまた大変なのです。

その点、ガラスレンズは銀塩フィルムの原理を応用した調光レンズの開発はプラスチックレンズに比べ非常に早かったり、かつて60年代にツァイスが発売したウロパールレンズなど波長抑制が比較的低コストで開発できるのです。

ガラスレンズだからこそ実現できたトリプルコントラストとも言え、偏光レンズの素材としてもってこいの材料ですね。
このコントラストも特許を取得しているそうです。

 

ガラスの優位性を最大限化させたCRYSTAL


かつては絶滅的な状況であったガラスレンズですが、サングラスレンズを中心に世界の状況がガラっと変わっています。
boot編集部もこのCRYSTALのガラス偏光レンズを体感した時に、「これはそうだよな!」って納得しました。

残念ながらレンズ単体での販売や度付レンズがありませんが、CRYSTALは非常に面白い存在です。
2024年4月に開催するbootのメガネ展示会「渋谷メガネの日!RAMBLE2024」にも出展しますので、是非ともお楽しみに!

 
【CRYSTAL日本取扱店舗】
メガネナカジマ
神奈川県川崎市多摩区中野島3-14-2
044-933-1343

オードビー大阪
大阪府大阪市北区本庄東1-6-14
06-6467-8482

 
 

 
 

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https://boot.style-n.net/2024/03/crystal/feed/ 0
毎日、メガネ屋 2024.03.13~テレビ・映画撮影現場のレンズの反射と写り込み~ https://boot.style-n.net/2024/03/glasses_for_the_tv_film_industry/ https://boot.style-n.net/2024/03/glasses_for_the_tv_film_industry/#respond Wed, 13 Mar 2024 09:00:25 +0000 https://boot.style-n.net/?p=12015 20年以上前から、映画やテレビドラマの小道具として使われるメガネレンズのカスタマイズを頻繁に承っております。以前は特撮っぽいミラーレンズへのレンズ交換や、キャラモノのカラーレンズの交換などが多かったのですが、最近はカメラの進歩が著しく「レンズの反射」や「写り込み」の対策を依頼されることが増えました。

 

メガネのスタイリングみたいな華やかな仕事は来ない

国内外のメガネブランドに日本でもかなり詳しい方だとは思うのですが、「メガネをスタイリングしてください」みたいな仕事は来ません。俳優さんの個性を台無しにしてしまいそうなキワどいメガネばかり選んでしまうと思うので、自分でも向いていないと思います。どのドラマや映画を観ても王道的な無難なメガネがスタイリングが多いので、この先もお呼びは掛からないだろうと諦めています。

 

究極に反射を抑えるレンズ探し

左)一般的な反射防止コート  右)低反射コート

撮影で使うレンズと聞くと普通のメガネ屋さんでは、度付レンズに使われる”一般的な反射防止コート”を入れて撮影用メガネとして用意されることがほとんどです。度付レンズ用を”度無し”として使うのだから、それなりにプロっぽい仕事のように感じますが、もはやこのレンズコートではダメなのです。カメラの性能が良すぎてしまうんです。

この”一般的な反射防止コート”が使われたメガネでカメラテストした後に、反射問題が発覚し私のところへ相談に来ます。ほぼ全ての場合で2~3日後に本番撮影を控えており、駆け込み的に対応している日々です。

 

撮影小道具のメガネはスタイリストさんが選ぶ?

俳優さんが掛けられるメガネはスタイリストさんが選ばれることが多くあります。そのスタイリストさんが、メガネ屋さんに反射の相談をして”一般的な反射防止コート”を入れて納品される流れです。

多くはありませんが、メガネ専門のスタイリストさんが担当する場合もありますが、専門の方がスタイリングして用意されたメガネも容赦なく私のもとへ相談に来ます。同じ業界人であってもレンズの知識は全く別のところにあります。反射に関してさらに奥が深く専門外ですから仕方がありません。

私は長年このようなメガネを作ってきたので、照明・カメラ・小道具の裏方の方よりご依頼を受けます。華やかな”スタイリスト”の人々は、もう丸投げです。撮影後のポストプロダクションで、反射を消す事も出来るようですが途方もない労力を割かなくてはならないので、最初から反射を軽減させたいのです。

 

レンズメーカー各社の低反射レンズを比べてみた

低反射と謳われているA社とB社のレンズを比べてみた

低反射と謳われているA社とB社のレンズを比べてみました。一般的な反射防止コートの”グリーンな反射光”ではなく、どちらもブルーに表面が反射します。確かにグリーンの反射光よりも、反射は低減しているのですがイマイチです。

ウェブサイトには「画面越しだからこそ相手にきれいに見える」などと書いていますが、提示されているデータは「視感度透過率」です。つまり自分が見るときにPCモニターなどが反射するかの数値。相手から見られるときの反射ではありません。

相手から見られるときの反射は「JIST7334の反射率」で表すようなのですが、この数値はどのメーカーも公表していませんでした。普通のメガネならば自分から見る反射が低減される方が大事ですから、これで良いと思うのですが何かモヤモヤします。一方的な勘違いな気がしてきましたが、皆さんはどう感じますか?

 

遂にパーフェクトな低反射レンズを見つけた!


海外でも同じような事例が無いかなと探していたところ、「Glasses for the TV & Film Industry」というサイトがありました。英文を読んでいると「Recently invented in Japan」との一文が!!!!!。マジか!つまり「最近日本で開発されたよ」と。

結果から言いますと、もうこのレンズは作られていませんでした。恐らく先の英語サイトは少し古い記事なのでしょう。しかし、メガネ業界には表に出ないジェダイクラスの方々がいまして、相談したところ何とか手に入れることに成功しました。撮影用メガネレンズの決定版と言って良いレンズです。
多くの偉大な専門家の方々の力を借りてしまったので、メーカーなどの詳細をお話しする事が出来ず申し訳ございません。

ビックリするほど低反射です

このところ高度なメガネに関するご要望が多く、頭を悩ませています。20年来こんな事をやり続けて知識を積んでいますが、これが何になるのだろうか分からなくなってきました。この知識をパスする人もいません。寂しい限りです。

もっと簡単にメガネ屋をやった方が儲かると思うのですが、どっかで「それは違うんだよな」と思ってしまう自分がいてそれが出来ないのです。

ある種の諦めなのですが、特撮などで使うような”見たことのないメガネ”を作るプロジェクトを昨年からスタートさせました。春の展示会で発表しますが、日本のテクノロジーでは実現出来なかったので、海外のラボに協力を仰ぎました。全てのアプローチを初めて挑戦する方法で行っています。

ドラマや映画で使用するような特別な1本を作る「MN DIMENSIONS」というブランドを創りました。すでに最初のプロダクトを作ったのですが、まぁまぁパンチが効いておりますのでお楽しみに。

 
 
note.でも連載中です。

 
 

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今年もやります!渋谷メガネ”ランブル”の日 4月開催決定! https://boot.style-n.net/2024/01/ramble_2024_shubuya/ https://boot.style-n.net/2024/01/ramble_2024_shubuya/#respond Tue, 23 Jan 2024 09:00:15 +0000 https://boot.style-n.net/?p=11976 2024年4月9日からの3日間、「渋谷メガネ”ランブル”の日」と題したメガネなイベントを開催いたします!
メガネ業界は4月と10月に展示会が行われるのですが、秋の展示会が終わったのも束の間、もう春の準備を始めてます。

■渋谷メガネ”ランブル”の日2024■
Open
4/9(火) 10:00 – 18:00
4/10(水) 10:00 – 18:00
4/11(木) 10:00 – 17:00
渋谷区神南1-3-10   神南アール2F
問い合わせ:customer@style-n.net

 

アジアのメガネメディアが集結


『RAMBLE』はbootが主催するメガネの展示会です。bootは香港「Vマガジン」や台湾「SO!EYEWEAR」などのアジアのアイウェア雑誌・ウェブメディアとも協力関係にあります。昨秋の「RAMBLE METROPOLITAN 2023」ではその関係性を大きく高め、海外ブランドの招致やリアルタイムな情報発信などアジアへのネットワークが拡大しました。

日本にいるとあまり気付かれないと思いますが、例えば日本のメガネ雑誌は、”日本語”であるため日本国内にその影響力は限定されます。日本のメガネ雑誌が海外で読まれていると思われる業界人もまだいらっしゃると思いますが、10年くらい前でその影響力は無くなったと言っても良いでしょう。

bootにも”日本語の壁”があり、近隣のアジア諸国は中国語が使われる地域が多く英語もそこそこ通じます。その壁を乗り越えるためにも、香港と台湾のメディアとタッグを組むことにより発信力を高められたらと考えています。現在、日本のメガネシーンでこのような取り組みをしているのはbootだけだと思うのですが、あまり日本の方はその試みを理解して頂けなくて残念でなりません。結構面白い試みをやっていると思うですが、国内だけで稼げた時代が長かったので仕方ないかなとも思っています。

 

時代を変えた台湾のウェブメディア『SO!EYEWEAR』


台湾のメガネのウェブメディア「SO!EYEWEAR」は、世界のメガネウェブメディアの中で世界一多く記事をアップしていると思います。中国語と英語で記事を作っていて、コロナを経てアジアNO1のメガネウェブメディアとなっています。日本ブランドが大好きな彼らは日本ブランドを多くピックアップしてくれるので、ダイレクトな反響として返ってきています。彼らに取り上げられるかどうかで、アジア圏の売り上げが変わるほど影響力があります。

昨秋のRAMBLEにはSO!EYEWEARは総勢8名で来日し、展示会期間中にリアルタイムな情報や記事をウェブに上げ続けていました。こんなことが出来るメガネメディアは世界中に彼らだけです。現状のアクセス数を聞いたのですが、もう太刀打ちできない数字になってました。そして彼らは恐らくメガネの展示会で世界初の試みをやっていて、詳しく話せないのですが新しいビジネスを確立させました。

海外に出ていきたいブランドは迷わずRAMBLEに出展してください。


 

コンテンツとPRとしての『場』


コロナ前からですが、メガネの展示会に限らず展示会が慣例化・恒例化されてしまい面白くなくなってしまいました。日本のメガネマーケットは20年を掛けて半減し、仕入れの場ではなくなってきています。仕入れが起きないのに高い出展費を支払うのは大変です。展示会に出展するブランドは、ストレスが溜まる地獄の三日間の様相なのであります。

RAMBLEではまずそこを受け入れて、展示会を「年に2回の生存確認」とか「出展すると国内・海外へ発信」される『場』として考えています。また会場内でもコンテンツ制作を行い、展示会の「前」「最中」「後」に話題が作られていくことに重きを置いています。

展示会は1回出て終わりって言う感じでコスパ悪いですよね。コンテンツとして残さないと勿体ない。多くの展示会の主催者は出展料を集めることが目的だと思いますが、bootはメディアミックさせる『場』として考えているので、展示会自体に収益を求めていません。今のところですが、他の展示会と比較するとビックリするくらい格安だと思います。

 

色んな人が集まる『場』


昨秋から展示会場内で動画の収録を始めました。「スマホ見えていますか?」という老眼バラエティ番組なのですが、湯山玲子さんやかせきさいだぁさんをゲストにお迎えして公開収録しています。今回も公開収録をやります!そういったメガネにまつわる著名人の方にもいらっしゃって頂いております。

RAMBLEはアジア系メディアの告知が強く、中国語や英語を話せる人が多く会場にいるので外国人バイヤーが多く集まっています。香港のVマガジンはヨーロッパに非常に強いネットワークを持っていて、ヨーロピアンバイヤーも増えてきています。オリエンタルなムード満載です。

ちょっとアンダーグラウンドな雰囲気なRAMBLEですが、かつてニューヨークの展示会「VISION EXPO EAST」に、招待者しか入れない地下会場「UNDER GROUND」という場所があったんです。そこはオシャレなブティックブランドばかりで、ニューヨークのアイウェア界の重鎮だったロバート・マークの審美眼に適ったブランドしか出展する事ができませんでした。

RAMBLEは本当の意味でのアンダーグラウンドではないのですが、気分はそんな感じのRAMBLEです。

 
 

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今、アメカジ好きに注目を浴びるG.I.メガネ「R.P.G.」あるいは「B.C.G.」とは? https://boot.style-n.net/2024/01/regulation_prescription_glasses/ https://boot.style-n.net/2024/01/regulation_prescription_glasses/#respond Tue, 16 Jan 2024 09:00:40 +0000 https://boot.style-n.net/?p=11958 80年代後半から90年代の終わりまでアメカジ業界のど真ん中にいた筆者ですが、あれから30年以上経った今も若者のファッションが、アメカジベースなことに驚かされますね。とりわけミリタリーアイテムは男女問わず浸透している様子で、定番のMA-1やカーゴパンツだけでなく、最近ではテック系と呼ばれるプリマロフトやゴアテックスの防寒着やフィジカルトレーニング用のジャージまでが、ストリートスタイルに溶け込んでいます。

個人的に一番面食らったのが、著者が若かりし頃に実践して「どてらじゃん、カッコわるっ」と女子に不評だった、ひょうたんキルトライナー(=M-65フィールドジャケット用キルトライナー)やら、白いモコモコライナーコート(=M-51やUSAFのフィールドジャケット用ウールパイルライナー)やらが、一昨年辺りに女性のカジュアルトレンドになったことですかね。

 

古着&セレクトショップ市場に出回っている「G.I.メガネ」

きっと古着好き、ミリタリー好きなセレクトショップのバイヤーが火付け役になったのでしょう。当初こそ米軍払い下げのヴィテージモノが流通していましたが、とうとう国内アパレルブランドやファストファッションまでが新品をつくってしまうほど過熱しました。よって本来は「ダサい」の象徴が、柔軟な発想で「カッコいい」へ変換されるのはよくあること。実はメガネにもそんな対象があって、最近気になるフレームがアメカジ系の古着屋やセレクトショップで扱われているんですよ。


それがこのフレーム。アメリカ軍が視力矯正の必要な兵士に支給していたR.P.G.(=Regulation Prescription Glasses)、いわゆる標準処方メガネ「S9」型で、別名GI(=Government Issue)グラスとも呼ばれていますね。


刻印の“USS”とはUnited States Safety Service CO.の略称で、この会社はアメリカ軍にメガネフレームを納入する総合商社のような存在。同社がアメリカに生産拠点をもつフレーム製造会社にOEM生産を依頼し、それを束ねてアメリカ軍に納入する、という仕組み。こうしたメガネフレームの生産は、過去にはAMERICAN OPTICALやTART OPTICAL、SHURON、そして最大手だったBAUSCH & LOMBなどが請け負ってきた歴史があります。

 

G.I.メガネ“S9”型の素性を探る

「S9」型においてはROCHESTER OPTICAL MFG.(ROMCO)やHALO OPTICAL PRODUCTS, INC.、PARMELEE INDUSRIES, INC.などの国内ファクトリーが生産し、1970年代初頭から2000年代初頭もの間、アメリカ軍に採用されていました。現在はROMCOが設計・製造を担当した、さらに軽量でシンプル、そして男女共用の「5A」型が後継モデルとして採用されています。したがって現在は、S9型の余剰在庫が払い下げられて多くが市場に出回っている、という状況です。


まるでアメリカで売っていたレコードの梱包のように、粗末な紙袋とソフトケースにS9型は入れられて、S9型はアメリカ軍に納入されます。製品名やサイズ、会計番号を示すDLAナンバー、生産業者などが印字されており、この画像の個体は1991年度の会計分で、納入業者は前述したROCHESTER OPTICAL MFG.とあります。


なんとも魅力的な「ビールボトルカラー」。最近はこの色を再現するアイウェアブランドもありますが、その元ネタがこちら。とはいえデモレンズすら装着されていないので、買うならばフレームに歪みのない個体を選びたいものです。


ちなみにヒンジは頑丈な7枚丁番。このへんにミリタリーらしさを感じさせます。


こちらは俗に初期型と呼ばれるブラックモデル。さらに偏光レンズでカスタムされています。こうなるとカッコよさが増します。


こちらはS9型の女性用モデルで、少々丸みを帯びたシェイプです。これまた女性が掛けるとすこぶる不評でして(笑)。

 

“S9型”に与えられた、不名誉ながらも愛すべきストーリー

さて「S9」型が人気を集めているのはレイバンのアヴィエイターやオークリーのMフレームのように、ミリタリーならではの質実剛健なストーリーやドラマチックな開発秘話が背景にあるから、ではありません。S9型にあったのは不名誉ながら親しみを込めてつけられた“B.C.G.”というあだ名。


B.C.G.とはBirth Control Glassesの略で、出産を抑制するメガネ=避妊メガネを意味します。どういうことかというと、このメガネをかけると誰もがダサく見えてしまって異性が寄り付かない➡妊娠するような状況、つまり一夜を共に過ごすチャンスがこないという米兵ならではのスラングなのです。本来はこんなメガネをかけている兵士はいじられキャラになりますが、この呪いをむしろ下品に絡んでくる男性兵を寄せ付けない“虫よけ”的に活用する女性兵も多かったとか(この場合は前述のR.P.G.をもじってRape Prevention Glasses=レイプ防止メガネなどと呼ばれることも)。


そんなサイドストーリーがあるからこそ、ヒネリの効いたファッションや遊びを兼ねて普段のメガネに選んだり、サングラスにカスタムしたりするオシャレさんが続出したわけですね。ちなみに彼女はクリストファー・ノーラン監督のイチオシ女優、アン・ハサウェイ。彼女もB.C.G.のリプロモノをギークにかけこなしていますね。

アメカジとは“アメリカ人のファッション”をソックリそのままコピーすることではなく、アメリカ出自のアイテムに本来の目的以外の空気を加えることで独自にファッションやデイリーユースに昇華する“ミックスカルチャー”。90年代に筆者世代がセルビッジデニムにハイテクスニーカーやゴローズをミックスしていたアメカジイズムが、アイテムを変えながらも現在に継承されているっていうことですね。

 
 





 
 
 

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東海光学の遠近両用レンズ「ニューロセレクト」を使ってみた https://boot.style-n.net/2023/12/neuro_select/ https://boot.style-n.net/2023/12/neuro_select/#respond Mon, 25 Dec 2023 09:00:59 +0000 https://boot.style-n.net/?p=11945 みなさん、スマホ見えていますか?
先月からbootのYouTubeチャンネルで、もうガンバラない老眼バラエティ「スマホ見えていますか」がスタートしましたが、かくいう私も「見えていますか?」と聞かれれば怪しくなってきた感じがあり……。そこで今回はレンズメーカー、東海光学さんにご協力をいただき、遠近両用レンズ「ニューロセレクト」を試してみることにしました。

 

サポートレンズは使っていたけれど……

まずは、私のメガネ遍歴からお話ししましょう。
私は小学生の頃から近視があり、メガネを常用しています。いわゆる強度近視と言われる度数です。手元の見え方については早くから対策をしていて、30代半ばからサポートレンズ(近方のピント調節をサポートしてくれるレンズ)を使用してはいました。とはいえ、一方で単焦点レンズも問題なく併用できており、手元の見えづらさはほとんど感じていませんでした。

変化が出てきたのは、42歳頃から。まずメガネのテンプル裏に書かれた品番が読みづらくなってきました。「これは3なのか、8なのか……?」という具合に。そして45歳に突入したぐらいからますます見えづらくなり、スマホは眼鏡を外してみることも増えてしまい……。強度近視なのでメガネを外せば近くは見えるわけですが、それも何だか格好悪いので遠近両用を新調することにしました。

 

東海光学「ニューロセレクト」とは?

私が試すことになったのは、東海光学の「ニューロセレクト」という製品。こちらは、脳科学技術をレンズ設計に取り入れ、より良い見え心地を追求したという遠近両用レンズです。

このニューロセレクトには、以下の3つのタイプがあります。


遠近タイプの【デイリー】、中間重視の遠近タイプである【タウン】、そして中近タイプの【ホーム】の3つです。これらは、自分のライフスタイルのなかで“主にどこを見たいか”で選ぶことになります。

私は、タイプによる使用感を確認するため、「デイリー」と「タウン」の両方を試すことにしました。グレードはどちらも5X。加入度数は思い切って+1.50まで上げました。これまで主に使っていたのは+0.75のサポートレンズや+1.0の遠近なので、ちょっとドキドキしますが……。果たして見え方はいかに!

 

タイプによる見え方の違いを実感

まず最初に出来上がったのは、デイリータイプのほうでした。パンフレットには、「ドライブやスポーツでクリアな視界 遠近タイプ」とあります。掛けてみてスマホを見ると、SNSの小さな文字もくっきりして、とっても見やすい。今までも文字が問題なく読める程度には見えてはいたけれど、文字の輪郭がパキっとして立体感が出た感じ。くっきり見えるとやっぱりラクなのだなぁと改めて感じました。

でも、ふと顔を上げると、なんだか家の中(3~4mぐらい先の距離)に、若干ボヤけて見えるところがあるような気がしました。「もしかして、これがユレ・ユガミというやつなのか?」と思いつつも、その数日後にあった子どもの運動会へは、このデイリーを掛けて行ってみることに。

結果的に、運動会にデイリーというチョイスは、大正解でした。見えづらかった右目の度数を上げたこともあり、とにかく遠くの子どもがよく見える。そしてそのまま視線をスマホやビデオカメラのモニターに落としても、これまたくっきりよく見える。室内で感じたユレ・ユガミは屋外では一切感じることもなく、何の違和感もないまま運動会の1日を過ごすことができたのです。

これまでのサポートレンズが、「全体的に85点な見え方」だったとしたら、このデイリータイプは、「遠くと近くの見え方は100点!」という感じ。私は遠くも近くもバチっと見える視界が好きなのだなと改めて感じました。車の運転をしないのでそこまで遠くが見える必要はないと思っていたのですが、子どもの運動会や発表会、またスポーツ観戦や観劇といったシーンでは、デイリーが向いているのではないかと思います。

室内の見え方や、パソコンの距離はちょっと見え方に慣れない感じがありましたが、使い続けているうちに中間部のユレ・ユガミのようなものは消え、今ではデイリーでパソコン作業をすることもできるようになっています。ちなみに、よく遠近両用を掛け始めると「階段が怖い」という話を聞きますが、足元の見え方についてはまったく問題ありませんでした。

 

パソコン作業は「タウン」に軍配

そうこうしているうちに、今度はタウンタイプを入れたメガネが完成。ドキドキしながら室内を見回すと……、デイリーのときに感じていたユレ、ユガミらしきものが無い! これにはびっくりしました。タウンは1.67で、デイリーは1.76で作ったという違いからなのか、デイリーを使っていたことで目が慣れてきていたからなのか、最初からすっと違和感なく掛けることができました。

タウンは中間重視というだけあり、パソコンの距離はやはりこちらのほうが見やすい。首を動かしても、ある程度姿勢を変えても問題なく見ることができました。
また、タウンでも遠くが見えないわけではありません。遠方の看板をパキっと見ることは難しいですが、駅の行先案内表示や、スーパーマーケットの商品棚、カフェのカウンターの上に掲げられているメニューなども問題なく見ることができるので、日常生活に支障はありません。仕事でパソコンを使う時間が長い日や、あまり遠くを見る必要のない日常生活においては、タウンのほうが快適かなと。

ただし、デイリーで外出することに慣れてしまった私にとっては、少々遠くの見え方にもの足りなさを感じる時もあります。これに関しては、見え方の好みにもよるかもしれません。

 

遠近両用を作る時に知っておきたいこと

今回遠近両用メガネを作ってみて感じたことがあります。
それは、遠近を作るときは単焦点の時以上にお店の方とのコミュニケーションが重要になるということです。見え方の好みや、その人のライフスタイルによって必要な度数、タイプ、グレードは異なるから、「これが正解」というものは測定だけでわかるものではありません。

その際重要なのは、私たちユーザー側も「どこを見る機会が多いのか」、「どう見たいのか」、「どんなシーンで使うのか」をしっかり伝えること。お店に行けば自動的に正解がもらえるわけではないのです。快適な遠近両用を作ることは、お店の方としっかりコミュニケーションを取り、お互いに納得できるところを探っていく共同作業のようなものであると私は感じました。

良い眼鏡屋さんであれば、測定結果に加え、私たちのニーズを加味して、レンズのメーカーや製品、設計のタイプ、グレードを選んでくれます。私たちユーザーは、テストレンズの入った仮枠で視界の確認をする際に納得いくまでスマホや遠くの景色、普段使っているパソコンを想定した距離などをチェックして、しっかり要望を伝えるようにしたいところです。

以上、長くなってしまいましたが、東海光学のニューロセレクト、とても快適に使えています。「遠近は使いづらい」なんて話も聞きますが、恐れることなかれ。私の周りは快適に使えている人ばかりです。手元が見えづらくなってきたら、ぜひ眼鏡店に相談してみてくださいね。

 
 

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スキー&スノーボードシーズン到来! https://boot.style-n.net/2023/12/ski_snow_board_google_rx/ https://boot.style-n.net/2023/12/ski_snow_board_google_rx/#respond Mon, 18 Dec 2023 09:00:31 +0000 https://boot.style-n.net/?p=11935 冬将軍到来!やってきましたスノーシーズン。
スキーやスノーボードを楽しむためには、視界が良くなければなりません。しかし、メガネやコンタクトレンズを使っている人にとっては、スキーゴーグルの選択が難しい場合があります。メガネの上からゴーグルをかけると、メガネが曇ったりズレたりすることがあります。コンタクトレンズを使うと、目が乾燥してゴロゴロして気になったります。

そこで、スキーゴーグルを度付化するクリップのスノーマスクが便利です。

スキーゴーグルを度付化するクリップ


このスノーマスクは、ゴーグルの内側に取り付けることができる度付化クリップです。レンズはクリップで固定されており、自分の視力に合わせて調整できます。
スノーマスクは、ゴーグルとレンズの間に空間を作ることで、メガネよりも曇りやすさを防ぎます。
レンズには曇り止めや、レンズ自体に曇り止め加工をすることが可能。

 

色んな種類のゴーグルに対応


スノーマスクは、様々なサイズや形状のゴーグルに対応しています。取り付け方も簡単で、ゴーグルのフレームに沿ってクリップをはめ込むだけです。取り外しも同様に行えます。スノーマスクは、コンパクトで軽量なので、持ち運びや収納も便利です。

またゴーグルを違うタイプへ交換した時も対応してくれるので、買い替える必要がありません。

 

快適なスキー&スノーボードライフを!


スキーゴーグルを度付化するクリップのスノーマスクは、メガネやコンタクトレンズの不便さから解放されるだけでなく、快適で安全な視界を提供します。またモトクロス用のゴーグルにも対応することから、オートバイ用のゴーグルにも対応しています!

スキー&スノーボードを楽しむなら、ぜひお試しください。

 
 
 

 
 

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【後編】RAMBLE METROPOLITAN 2023 レポート https://boot.style-n.net/2023/11/ramble-metropolitan-2023-report2/ https://boot.style-n.net/2023/11/ramble-metropolitan-2023-report2/#respond Thu, 02 Nov 2023 09:00:31 +0000 https://boot.style-n.net/?p=11886
前回に引き続き去る10月10(火)・11日(水)に原宿表参道で開催された、カルトなアイウェアブランドが揃った展示会「RAMBLE METROPOLITAN 2023」のリポートをお伝えします。今回は台湾のアイウェアメディア『SO EYEWEAR』とタッグを組んで、知られざる台湾ブランドを誘致しようという初のコンテンツが始動。実は台湾のアイウェア界には若い世代が積極的にブランドを立ち上げる土壌があります。そんな中でキラリと光る逸材ブランドをRAMBLEもバックアップしていこうとなったのです。今回誘致したのは以下の2ブランド。いずれも日本にはない独特の発想がユニークで、これから目が離せない存在となるでしょう!

 

CLASSICO

ユースカルチャーとの親和性の高さで、どんどん世界を広げている台湾の新星

2012年にデビューした『クラシコ』はヴィンテージのベスパを介して知り合った若き創設者、GaryさんとTomさんが立ち上げたブランドで、屋号が示すようにクラシックな色使いやヴィンテージ感がありつつ、モダンなエッセンスがそこに加えられているためリプロダクションとは一線を画しているのが特徴です。同ブランドは台湾のユースカルチャー、とりわけファッションやアートムーヴメントとの強い結びつきがあり、直営店には地元の若者はもちろん、お土産にと彼らのフレームを目指してくる海外旅行客もいるそう。

特に筆者が気になったのは、検眼メガネからインスピレーションを得た“ヴィンテージトライアルフレーム・クリップオン”やユニークなブローラインのコンビフレーム。小物も充実しており、地元台湾を拠点に活躍するイラストレーター、Johnnp(ジョンピ)が描くポップなイラストを冠したアイテムや、ソリッドなアルミのメガネケース、アセテートのリングやスマホケースなどなど。また、さまざまなアーティストとセッションしたコラボレーションアイテムなど、ナカナカによかもの揃いなのです。

 

CRYSTAL

ガラス製の高機能偏光レンズを標準装備したサングラスで、もっと世界を美しく見せる見出し

台湾からの刺客、とも言うべきブランドが上陸しました。『クリスタル』は、高機能を携えた“ガラス製の偏光レンズ”を標準装備するサングラスに特化したブランド。マネージャーのEdwardさんは、彼の父が30年来経営するレンズ工場(アメリカのスポーツサングラスにOEMでレンズを供給している)をバックグラウンドに、2018年にこのブランドをスタート。ちょっとした摩耗で傷がつくポリカーボネイトレンズと異なりガラスレンズは傷に強くひずみがない、そしてクリアな視界も持続するのが特徴。

日本ではガラスの偏光レンズの選択肢が少ないだけに、これはかなりのストロングポイントになるでしょう。Edwardさん曰く「赤はもっと赤く、緑はもっと緑に見えます。旅に持っていけば美しい景色がさらに美しく、感動的に映えます」とのこと。また通常のサングラスでは暗い景色はもっと暗く見えるけれど、このレンズはサングラスを外さずともしっかり景色が見えるそう。視界を楽しむことができれば世界はもっと美しく見える、という彼の言葉には、ものすごい説得力がありました。

 
さて、いかがでしたか?今年のRAMBLE METROPOLITANは「知り合いから絶対チェックしておいた方がいい、と言われたので来てみたよ」とヨーロッパからもバイヤーが来場するなど、以前にも増してグローバル感がアップしたという実感がありました。また、ほとんど情報が知られていなかった台湾ブランドの高い実力も知ることができた回となりました。そして“老眼鏡”をネタに展示会場で繰り広げられた“湯山玲子さん”、“かせきさいだあ”さんとの対談『スマホ見えてますか?』の動画も、もう間もなくアップされます。ぜひチェックしてみてください。それでは!

 

 
 

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