毎日、メガネ屋 2022.07.31~もしメガネ屋になりたいと想っているあなたへ~

もしかしたらいるかもしれない、メガネ屋になりたいと想っている方へコラムを書きたいと思います。

なぜメガネ屋になったか、今も良くわからない

先日、雑誌「HailMary Magazine -ヘイルメリーマガジン-」の”生涯現役プレーヤー”というインタビューを受けました。メガネ屋になって24年目。私の師匠や父を見習って70歳まで現役を続けるとすれば、ちょうど半分くらいが過ぎるタイミングの現在です。

私はまだ半分くらい現役生活が残っていると考えているので、”生涯現役プレーヤー”と言われると「まだまだ未熟者です」と言いたいところですが、そう言ってはいられない年齢になってきたのも事実です。

また同世代の同業者とは、かなり違ったメガネ屋人生です。一般的な跡取りっぽくないし、サラリーマン→起業とも違います。ここ20年を席巻した格安メガネチェーンを含む、ベンチャーっぽいメガネ屋さんのオーナーも同世代の方が多いのですが、それとも違います。

そもそも私は家業のメガネ屋を継いだと思われることが多いのですが、父は「時計・メガネ・宝石」の兼業店でした。そして父は時計の修理技師の国家資格を持っていて、メガネのウェイトが一番小さくそれほど力が入っていませんでした。私が家業を継ぐ時に何故か「メガネ専門店なら継ぐ」と言ったのです。メガネの技術は新宿の紀伊国屋にあったメガネ店「三邦堂」で、実家の店を手伝い始めてから身につけたので、修行が終わるのに約13年の歳月が掛かりました。同世代のメガネ屋さんの殆どは、メガネの専門学校を出ています。

どうしてあの時「メガネ専門店なら継ぐ」言ったのか、今も良く分かりません。

 

あなたがメガネ屋になるためには?


今日からアルバイトでもメガネ店で働き始めたら、もうメガネ屋さんです。先日、「眼鏡作製士」なる国家検定が制定されましたが、この国家検定は「眼鏡作製士」と名乗れるという名称独占資格という国家検定です。「眼鏡作製士」の国家資格を持っていなくても、メガネ屋さんを経営することが可能です。
つまり、医師や弁護士のような国家資格を持っていないと業務につけないものではありません。ちなみに医師や弁護士のような国家資格を、業務独占資格と言います。

ですからJINS(ジンズ)やzoff(ゾフ)のような格安メガネ店ではアルバイトの方でも視力測定が出来るわけで、加工やフィッティングをすれば立派なメガネ屋さんとなれるわけです。「眼鏡作製士」の国家検定により、メガネ作りの技術がボトムアップすれば良いのですが、何も変わらないように思っています。

自分の店を持つには?
・店舗を借りる
・商品を揃える
・視力測定機器を揃える*リース契約可
・レンズ加工機を揃える*リース契約可
・お店を知ってもらう(PR)
etc…

メガネ店を始めるのに特別な届け出は不要です。コンタクトレンズを販売する際には、「高度管理医療機器」という薬事法に則った届け出が必要となります。この届出はかなり大変ですが、コンタクトレンズを販売しなければ関係ありません。メガネは度付レンズが「一般医療機器」となっていますが、「一般医療機器」の届け出は不要です。すぐにメガネ屋を始めることが出来ます。

開店資金が潤沢にあればすぐに何でも出来てしまうと思いますが、開店資金が限られる場合で困るのは視力測定機器とレンズ加工機です。これはリースと言ってローンのように月々払いで調達するのが一般的なのですが、ローンなので審査があります。このところ審査が通りづらくなっていると耳にします。中古で調達する場合もあります。その他にもフレームを調整する際に必要なヒーターやフィッティング工具など、細々したものが必要です。

自己資金が少なく銀行からの借り入れを検討されている場合、最初の融資で300万円以上の借り入れは困難です。強力な担保があったり、お金持ちの保証人がいると良いのですが、なかなかそうはいきません。銀行はどんなに事業計画が良くても、あまりお金を貸してくれないのです。「融資」や「投資」など資金調達の方法は最近、色々とあるので調べて見てください。

 

↓は私が4年前に新店を出そうとした際に想定した概算です↓

————————————————————————-
月売上 200万円想定 スタッフ2人(社員1人・アルバイト1人)
————————————————————————-
■初期投資■
物件契約 ¥2,500,000-
内装費 ¥3,000,000-
仕入れ ¥3,000,000-
電話・エアコン設置など設備費 ¥500,000-
スタッフ給与3ヶ月分 ¥1,350,000-
空家賃3ヶ月分 ¥750,000-
————————————————————————-
必要開店資金 ¥11,100,000- (借入:1000万 自己資金:110万)
————————————————————————-
■月々のランニングコスト
家賃 ¥250,000-
人件費 ¥450,000-
水道・光熱・通信・雑費 ¥50,000-
機器リース ¥70,000-
借り入れ返済 ¥145,000-(返済期間6年 金利1.5%)
————————————————————————-
月々の経費 ¥965,000
————————————————————————-

個人でメガネ店をやるとなると、利益率は大手チェーン店より遥かに低くなりますし、良いブランドの仕入価格はかなり高いです。この試算で月々掛かる経費から逆算すると月商200万円が必要だと考えます。個人の小規模なメガネ店で月商200万円を達成することはかなり難しいかもしれません。通常のオーナーが一人で経営されている店舗だと、月商100万~150万円の売上で大成功という時代になっています。

この想定から初期投資やランニングコストを削るとなると↓

・スタッフ自分1人・・・売上がなければ給料は「減る」
・家賃の安いところへ出店・・・来店客数が「減る」
・内装費を安く・・・メガネ店で内装をケチるとかなり「ダサく」見える
・仕入れを抑える・・・お店の魅力が「減る」
・機器リース費を抑える・・・技術があれば十分「補える」

最近は折込広告や雑誌広告よりも個人店はSNSを活用したPRを活用するので、コンテンツさえ自力で作れれば広告費は限りなく抑えられます。
かなり大雑把なこの試算ですが、4年前に東京都内の渋谷エリア1階の物件で試算しました。

 

メガネ店に将来性はあるのか?

日本のメガネ業界はこの20年間で市場規模を半減させました。これはジンズやゾフのような格安チェーンの登場によって、販売単価が下がってることが大きな原因です。また個人のメガネ店はシニア層の顧客が、高単価の商品を買って頂くことにより支えられてきた側面があります。しかし、団塊の世代の方が健康寿命を超え始め、購買力に目立って陰りが見え始めています。コロナウィルスの感染拡大の影響もあり、シニア層の来店が著しく減りました。これまでの個人のメガネ店は、そういった悪いスパイラルの渦中にいます。

世界的には近視の方の割合が増えており、特に若年層の近視化が進んでいます。しかし日本は少子化。2021年の出生数は85万人と、20年前から35万人も減らしているのです。「全体のマーケットは急激に縮小している」と言って良いでしょう。少子高齢化の影響が効き始めていて、店舗数を大幅に減らすチェーン店が目立っています。

私は大小に限らずチェーン店、多店舗展開をするメガネ店は今後かなり難しいと考えています。4年前にそういった結論に至って出店を辞めました。その後すぐに、コロナウィルスがやってきたのでラッキーでした。ただコンセプトのしっかりしている店は今後、非常に魅力的だと考えています。画一的なコンセプトではなく、1軒1軒が違うコンセプトのメガネ店であることが大事です。

 

メガネ店をやりたい若者がいない

私がメガネ屋になった当時、20代で同世代の若者が多くいました。そして20代の内に独立した方も沢山いました。しかし最近、そういった若者の独立をほとんど聞かなくなりました。メガネ技術者の専門学校が全国に3校?くらいあるのですが、全ての学校を合わせた全日制の卒業者は年に約30名くらいだそうです。ちなみに眼科で働く視能訓練士(国家資格)は毎年800名以上が国家試験に合格しています。

私は2代目で、新しく自分のコンセプトで店を作っていた友人が羨ましくて仕方ありませんでした。その後、私より少し若い方の独立がありましたが、かなり私に近い年代の方です。今の若い方にとってあまり魅力的な仕事でないのかも知れませんし、恐らく日常的に触れるメガネ店はジンズやゾフ、眼鏡市場と言った量産系のどこにでもあるメガネ店だけなのかも知れません。これはメガネ屋全体の将来としてあまり良くないと考えています。
やっぱり若い方達にどんどん参入してもらったほうが、活気づきます。

もし、メガネ店をやりたいと想っている方がいたら、このコラムを参考にして頂けたら幸いです。

 

毎日メガネ屋」はnote.でも連載中です。

 

 



関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。