ハズキルーペと老眼鏡

昨年末、久しぶりにハズキルーペのCMを見ました。
一昨年の大ブームから一息ついた感があった昨年のハズキルーペですが、相変わらずCMに出演される芸能人の方々や放映時間・放送の秒数など豪華です。

多くのメガネ屋さんは、ハズキルーペをあまり好意的に見ていない感じがあります。それはハズキルーペは「拡大鏡」であり、ピントを合わせる「老眼鏡」ではないという点で否定的になっているのだと思います。長時間掛け続けるのには疲れるということなんでしょう。それは理解できます。

メガネナカジマでもハズキルーペを販売しているのですが、やはり老眼鏡をお作りするのをオススメしてしまいます。お客様としては簡単に出来合いの老眼鏡のように買えるハズキルーペは、煩わしくなくて良いのでしょう。メガネを買うのは、測定したりフレーム選んだりフィッティングしたりと、やはり時間が必要です。

私がずっとハズキルーペについて疑問に思っていたことがありまして、昨日から猛烈に調べました。
“何を今更”感がたっぷりなのですが、スッキリ解決することが出来ました。

今回はハズキルーペの深堀りコラムとなります。

 

拡大鏡と老眼鏡


ハズキルーペーは、その名の通り「ルーペ」であり「拡大鏡」であります。拡大鏡と言えば「虫眼鏡」も同じ仲間と言うことが出来ます。拡大鏡なので「1.3倍」とか「2倍」など「倍率」で表記されます。ちなみに「ルーペ」はドイツ語で、「虫眼鏡」は日本語。。。

一方、老眼鏡はピントを合わせて度数を設定するもので、出来合いの老眼鏡で言うところの「+1.50」や「+2.00」のような「ディオプター」(度数)で表記されています。

分かりやすく言うと、「拡大鏡」はその名の通り”拡大”された像(虚像)を見ているのに対し、老眼鏡は見たい距離にピントを合わせた像を見るものになっていて、広義では拡大しているのではありません。
*いずれもかなりざっくりした説明ですみません。

 

ルーペは通常レンズが1つ


「拡大鏡」「ルーペ」「虫眼鏡」を思い浮かべてください。通常レンズは1つですよね。しかしハズキルーペはレンズが2つ。メガネの形状をしています。
レンズが2つある双眼式のルーペもあるのですが、目とレンズの距離が離れているタイプがほとんどで、ハズキルーペのようにメガネに似ているかと言えば、少し違った形状です。
老眼鏡と違い、「ルーペ」として名乗るには”拡大”させる必要があるわけです。

ハズキルーペのレンズ度数を調べて見たところ、1.32倍の度数は「+1.25」と検出されました。老眼鏡の度数で言えば初歩的な老眼鏡の数値です。倍率と度数の換算式があるのでこれはそうなるのですが、じゃぁ”ハズキルーペの1.32倍と老眼鏡の+1.25は同じものですか?”というのが私がずっと疑問に思っていたことなのです。

ハズキルーペの登場から数年も経過して、今更これを検証するのですから、時すでに遅し。
ただこの件について、メガネ屋さんはほとんど誰も書いていませんでした。そう、ただ一人を除いて。

*もしかしたら私が見つけられなかっただけかもしれませんが。

 

ハズキルーペは”ルーペ”でなくてはならない


ハズキルーペはルーペを名乗る以上、「拡大鏡」でなければならないのです。いわゆる普通のレンズ1つタイプのルーペは、”見たいもの”と”ルーペ”と”目”までにある程度の距離があるのが普通です。ハズキルーペはメガネタイプなので、虫眼鏡のように顔から離れたところで使うものではありません。なので装用距離がメガネである以上、通常のルーペのレンズ設計ではダメなのです。

老眼鏡は見たいものの距離によって度数を調整して、度数を決定します。例えば「パソコン用」「読書用」などがその目的距離になりますね。ハズキルーペの場合、1.32倍(+1.25)・1.6倍(+2.50)・1.85倍(+3.25)とものを”拡大”させて見せなければ「ルーペ」と呼べません。しかも双眼のメガネタイプです。

双眼のルーペ・拡大鏡というと、前述の通りレンズと目の距離を遠くする必要がありました。これは拡大させるための光学的な方法です。しかし目とレンズの距離を離すと、拡大されるけれども視野が狭くなってしまう問題がありました。

それを解決するためには、メガネタイプのハズキルーペレンズには専用設計が施されています。

 

設計者は岡本善二郎さん

ハズキルーペのレンズ設計にはプリズムが応用されていて、老眼鏡と同じ度数+1.25で見ても拡大されて見れるような技術が使われています。なのでハズキルーペは間違いなくルーペなのです。プリズムというのはまさに↓のように光を曲げる構造で、これがレンズに仕込まれています。プリズムによって像が拡大される解説は割愛させていただきます。

このことを2011年の時点で詳しく検証されていたのが、故・岡本 隆博さん。㈱アイトピア代表、日本眼鏡教育研究所代表であり、業界の噛みつき親父として有名でした。メガネの通信販売をしている業者に噛み付いたり、両眼視や資格制度について噛みつかれた方も多かったと思います。

岡本隆博さんはハズキルーペの前の製品「ハズキペアルーペ」にも言及されています。この製品は一般的な双眼ルーペ同様に、目とレンズの距離が離れています。これを設計した同姓の岡本善二郎さんを「非常に真面目に設計されている」と評しています。

ハズキルーペは「日本製」「座っても壊れない」などのインパクトが先行していますが、レンズ設計も非常に考えられて作られた製品だったのですね。

 

ハズキルーペについて詳しく知りたい方は、2011年に書かれていた検証ブログが↓。光学的に少し難しいのですがご覧になってみてください。
「ハズキの残された謎がついに解けた」
「ハズキ以前の双眼ルーペ」

 

私も生前の岡本隆博さんからお電話を頂いておりました。「フレームカーブの強いスポーツサングラスを度付きにする場合、度数をどう決定しているか?」との質問でした。質問と言っても、回答がマズいとご自身のウェブサイト上で吊るし上げられるので、ホントに面倒くさいのですが、電話口での岡本隆博さんはネットでの論調よりも温厚な印象がありました。

当時、スポーツサングラスの度付は専用設計がなく、通常の度数をカーブ用に換算して補正する必要がありました。私にはレンズの先生がいまして、その先生が海外で開発された度数換算ソフトを2001年の時点で私に提供してくれていました。とあるスポーツサングラスの専門店が、レンズメーカーと組んで補正ソフトを出す遥か前の話で、精度は雲泥の差であるくらい的確な計算ソフトでした。後にOAKLEYが出すカーブ自動補正レンズに使われるものとなったのですが、このことを話すと「そんなソフトがあるのか!」ととても驚かれていました。

それから海外レンズの事情を興味深く質問してくださり、00年代初頭に日本ではほとんど知られていなかった波面計測の話をしたのを覚えています。
そんな岡本隆博さんのハズキルーペの記事を、今更ながら読んでみて感慨深いものがありました。

ハズキルーペと老眼鏡。どちらも既製老眼鏡のような立ち位置ですが、少し機能が違います。
既製品はいずれにしても左右の度数が同じですので、本来ならばちゃんと測定した老眼鏡を作られるのが理想ですね。
左右が同じ度数の方は非常に少ないので、メガネ屋さんの生業として測定した老眼鏡をオススメするのは至極真っ当な気がします。
ハズキルーペを売りたがらない、メガネ屋さんを責めないで下さいませ。

ちゃんと調べてみると面白いですね。

 

 

Special Thanks
東京セイスターグループ 古田さん
めがね堂 西田さん

 

 

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