「オトコのメガネ考」 “サーモント・ブロー” その2
サーモント・ブローの魅力はパッと見て「おおっ、カッコいい!」と惚れる華々しさよりも、ジワリジワリと掛け手のキャラクターを味わい深くする、いわば鍋料理のようなものだと思います。今回はその楽しみ方を考察してみましょう。
前回でサーモント・ブローの出自に触れましたが、将軍→偉い人→年配者のメガネ、と想像しがちです。確かにそういう年齢に近づくにつれ、貫禄が出てくるのは間違いありませんが、30~40代の男性がカジュアルにサーモント・ブローを掛けているのを見るとなかなかに上手いな、と思います。
僕が最初にサーモント・ブローのトリコになったのは20代の終わり頃で、キッカケはベスパ(イタリアのレトロなスクーター)をカリカリにチューンナップしたストリートバイカーのスナップ写真でした。当時のバイカーといえばダブルの革ジャンに強面のサングラス、という厳つい“いかにもワルそう”なルックスが定番でしたが、その彼はバブアーのオイルジャケットにボンボンの付いたニットキャップを被り、薄色レンズのサーモント・ブローというスタイル。その「ダサかっこいい」脱力感にヤラレた次第です。
そう、サーモント・ブローは今やオッサンの貫禄付けツールを脱して、遊び道具感覚で掛けこなすイメージで挑むのがベストといえるでしょう。
CHECK!!
サーモント・ブローをギークに「遊ぶ」ためのポイントと選ぶべきモデル
遊び感覚で掛けこなす、と言っても難しく構えることはありません。きっと皆さんはすでにタイドアップしたシャツにジーンズだったり、ショーツ&素足にローファーだったり、という脱力“遊び”をすでに実践していると思います。捉え方は一緒です。そのケーススタディをいくつか紹介しましょう。
ケーススタディ その1:質実剛健な真面目モデルを色で遊ぶ
「SHURON Ltd.(シュロン)」といえば1865年創業の老舗で、A.O.やボシュロムと並ぶアメリカ御三家メーカー。今もMADE in U.S.A.を貫く正統派で、その佇まいはファッションとは無縁の質実剛健さが際立つ。その歴史に敬意を表しながら、ザ・真面目・オブ・真面目なフレーム“RONSIR”を薄色レンズで都会的なサングラスにカスタムしたい。
ケーススタディ その2:アイコニックなブランドを王道モデル以外で遊ぶ
サーモント・ブローのパイオニアといえば「A.O.(アメリカン・オプティカル)」社。その遺志を継いでサーモントの商標を持つのが、日本の「BJクラシック」だ。彼らが展開するサーモントのバリエーションから、あえて王道ではなくラウンドシェイプの“S-84111”をチョイス。眉のラインをキリッとさせつつ柔和なフォルムで肩の力が抜けた着こなしにピッタリ。
ケーススタディ その3:コンテンポラリーなデザインで遊ぶ
サーモント・ブローのメソッドを踏まえつつ、現代的に昇華したハイデザインなプロダクトを2本目に。狙い目はドラマ、教場でキムタクが掛けている「MASUNAGA since 1905」の“WALDORF”や「DITA」の“STATEMAN-THREE”を推したい。ともにブロー(眉)パーツをセルから硬質なメタルに置き換えたカッチリ感は、デキる男をアピールできる。
まとめ
いかがだったでしょうか。他にもクラシックの枠を超えたインパクト大なデザインやイノベーティブな構造のフレームなど、まだまだ紹介しきれないほど沢山のサーモント・ブローがあります。かくいう僕も、それぞれ個性的なデザインコンセプトを持ったフレームやサングラスをシーンや気分で掛け替えて遊んでいます。ぜひ自分のライフスタイルに合った1本を見つけてみてください!
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実川 治徳
フリーランスライター
アパレルブランドの店長、プレスを経て2000年からフリーランスライターとして活躍。アイウェアやファッションに特化した記事をメディアに寄稿し続ける。2005年から眼鏡の専門誌として知られるワールドフォトプレス発行の「モードオプティーク」にて、アイウェアの国際展示会SILMのリポートを執筆し、世界中のデザイナーと親交を深める。2016年からはネコ・パブリッシングがバックアップする「V MAGAZINE JAPAN」の編集・執筆を手掛け、世界のアイウェアシーンを発信する。フリーランスのフットワークの軽さを活かし、現在はメガネブランド「GROOVER SPECTACLES」の北米向けセールス&プロモーションを担当。
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