もう迷わない。バイク乗りが選ぶメガネ&サングラスの条件。
過去20年は年間延べ、2万kmくらいのペースで走りました。平日は神奈川県内から東京の仕事場までの往復100km。週末は自宅から伊豆半島を半周で250kmちょいをツーリング。我ながらクレイジーでした。けれどそのおかげか、バイクに乗る時に快適なモノとそうでないモノの取捨選択ができるようになり、おのずと身に着けるモノのスタイルが決まってくるもんです。
たとえばメガネ。あるいはサングラス、というかその両方をひっくるめて“アイウェア”としましょうか。ライダーにとってアイウェアは、必要不可欠なアイテムの中でも最上位にある大事なギア。なにせ刻一刻と変わる道路状況の情報を入手するのは「目」なのですから、その大切な器官を守ることは最重要課題と言えるでしょう。では、どんなアイウェアがライダーのギアとしてふさわしいか。それを考察してみましょう。
CHECK!!
ライダーのアイウェアに必要な絶対条件
バイクに乗るということは移動の手段であると同時に、安全な日常の境界線を一歩超えた、スピードの世界と対峙する“非日常”を体験することです。だからこそ身に着けるアイウェアは、日常使いよりもタフで機能的なモノを選ぶのが正解。まずは絶対的に必要不可欠なスペックは押さえておきましょう。
眩しさを軽減できること
これは日中のライディングには必須ですね。眩しさだけでなく有害な紫外線を防ぐUVカットレンズであることは大前提。ただし、極度に色の濃いレンズはトンネルの中や日没後の走行には不向きなので避けましょう。
丈夫であること
ヘルメットの着脱の際に、メガネやサングラスを地面に落してしまうことは、よくあることです。またヘルメットにシールドを装着していない場合、虫や小石などが顔面をヒットすることが、まあまああります。これらの衝撃でも割れにくいレンズや壊れにくいフレームを選びたいですね。
視界を遮らないフレームデザイン
バイクはちょっとした事故でも重大な怪我を負うため、ライダーは常に視界に入るものを警戒する必要があります。フレームの一部が視界を遮ることで咄嗟の判断に遅れが出る、となればフレームの面積が広いデザインは避けたいところです。
こめかみを圧迫しないテンプルデザイン
バイク用ヘルメットはフィット感が命。それゆえにアイウェアのテンプルがヘルメットの内装に押されてこめかみを圧迫するので、長時間のライディングで頭痛を引き起こすこともあります。テンプルの太さはほどほどに。
風の巻き込みが少ないデザイン
高速走行時にフレームの隙間に風が入り込んで涙が溢れる経験は、バイク乗りにありがち。ラップアラウンド型のスポーツフレームは、風の巻き込み防止を盛り込んでいますが、普通のフレームの中にも微細なカッティングで上手く風をかわすモノもあります。
以上の5つは守るべき最低ラインとして留意しつつ次の項目では、より選びの精度を高めていきますよ!
ジェット派、フルフェイス派。それぞれに適した素材&カタチは⁉
何度かヘルメットの話が出ましたが、ライダーのアイウェアはヘルメットとの相性も重要です。そうなんです。どんなに優れたアイウェアも、ヘルメットとの相性が悪ければ魅力は半減してしまします。その相性とはヘルメットメーカーの帽体形状も関係しますが、大枠でヘルメットの種類、つまりジェット(=オープンフェイス)か、フルフェイスかで、ある程度選びのアウトラインが定まってきます。
ケース1:ジェットヘルメット
最初に申し上げておきますが、僕はこっち派です。風を感じていたいから……(笑)という話はさておき、顔が露出して視界が広い分、フレーム形状の制約が少ないのが利点です。ただしフレームにボリュームがありすぎると、ヘルメットのトリム(縁)と干渉してしまい、フレームがズレてしまうので要注意。太すぎるフレームが視界に入り込むのがNGなのは前述の通り。また僕の経験上、超軽量で柔軟性が高いメタルフレームはヘルメットの内装に押し付けられて“左右のアイポイント(黒目の中心)”と“光学中心(レンズんの最も光学効果が高い中心部)”がズレたり、また軽量がゆえに風圧を受けるたびフレームが歪んでしまうことも、ままあります。個人的には程よくシェイプされたセルフレームやラウンドシェイプのスポーツタイプがイチオシ。バイカーファッショと親和性が高いので、バイクを降りての普段使いにも活躍してくれるからです。
選びのポイント まとめ
1.ボリュームのありすぎるフレームはヘルメットと干渉するので×
2.軽量で柔軟性が高すぎるメタルフレームは歪みに注意!
3.程よくシェイプされたセルフレームやラウンドシェイプのスポーツフレームが◎
ケース2:フルフェイスヘルメット
ジェットヘルメットと、フルフェイスと大きく違うのは、ヘルメットとアイウェアを装着する順番。前者はヘルメットを被る前でも後でもスッと掛け外しできますが、顎まで覆うデザインの後者はヘルメットを被ってからアイウェアを、という順番。そのためフルフェイスでは耳に巻き付けるケーブルテンプル装備のフレームは掛けられません。モダン(テンプルの先)が極度にカーブしたテンプルを持つモデルも難しいでしょう。理想はヘルメットを装着したまま楽に掛け外しのできるストレートテンプル装備のモデル。さらにジェットと違い、フルフェイスは目の周りのみがオープンになっているので、フレームサイズはやや小ぶりを選ぶといいでしょう。さらにメタルフレームやナイロール(フレームのフロントが上半分のみで、下側はナイロンの糸でレンズを吊り上げるタイプ)で、少しでも広い視界を確保したいところです。
※フルフェイスヘルメットにおすすめするメガネについて、詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください!
選びのポイント まとめ
1.ストレートテンプル装着モデルが理想的。
2.ヘルメットのアイホールに収まる小ぶりのサイズを選ぶ。
3.メタルフレームやナイロールフレームで、より広い視界を確保すべし
長距離&長時間のライディングを“調光レンズ”がサポート
ひとしきりフレームの候補が上がってきたことで、最後にレンズのお話を。フレーム選びは楽しいですが、レンズとなると知識が……という諸兄は、まずロングツーリング&温泉郷で1泊2日(笑)の行程を想像してみてください。目いっぱい走りたいから出発は日の出前。日中は高速道から山あり谷あり、トンネルありの山道を走破。夕映えの中、温泉郷に到着し、夕食後は土産物を買い込むと。翌日も朝から走り倒して家路につくのは日没後。とまあこんなシナリオでしょうか。さて、こうなるとメガネユーザーは日中用のサングラスと、早朝・日没用のクリアなメガネを用意せねばなりません。ツーリングの旅はなるべく荷物を少なく、が鉄則ですからわざわざアイウェアを2本用意して、天候で掛け替えるのは面倒ではありませんか。
そこで僕が実際に使ってみて重宝しているのが「調光レンズ」です。調光レンズとは紫外線が照射されることで、無色から濃い色に変わる機能レンズです。紫外線量の多少によって色の濃度が変化するので曇天では薄色、晴天では濃色、そして夜間はクリアへ自動的に切り替わっていきます。つまりフレーム1本を掛けたまま1日中快適に過ごせるというポテンシャルの高さが自慢なんです。ただし紫外線によって変色するのでUVカットを施したシールドを併用すると反応しないのが欠点。そういうライダーには紫外線だけでなく可視光線でも変色する調光レンズが存在するので、そちらを装着するといいでしょう。
いかがでしたか? 今回は僕の経験値から独断と偏見で、ライダーに最適なアイウェア選びを考察しましたが。もちろん車種やバイクとのかかわり方、ヘルメットメーカーによるフレームとの相性によっては当てはまらないこともあるでしょう。そんな時こそ思うがままにアレンジしちゃってくださいませ。何しろバイクは「自由」な乗り物ですので‼
調光・偏光レンズについて詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
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実川 治徳
フリーランスライター
アパレルブランドの店長、プレスを経て2000年からフリーランスライターとして活躍。アイウェアやファッションに特化した記事をメディアに寄稿し続ける。2005年から眼鏡の専門誌として知られるワールドフォトプレス発行の「モードオプティーク」にて、アイウェアの国際展示会SILMのリポートを執筆し、世界中のデザイナーと親交を深める。2016年からはネコ・パブリッシングがバックアップする「V MAGAZINE JAPAN」の編集・執筆を手掛け、世界のアイウェアシーンを発信する。フリーランスのフットワークの軽さを活かし、現在はメガネブランド「GROOVER SPECTACLES」の北米向けセールス&プロモーションを担当。
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