メガネの町、鯖江に生きるアウトサイダー、ストーンD & スプラング
先月の記事で告知したとおり、去る4月4日(月)~6日(水)の3日間、東京渋谷にてboot主催によるアイウェア展示会「渋谷メガネ“ランブル”の日」が開催されました。この春の時期に東京各地で催されるアイウェア業界のオフラインイベントの中にあって、一番こじんまりした規模でしたが、集まった8ブランドは“濃い口”な個性派ばかり。そんな彼らを会場にて取材したレポートをお届けします。第6回目は『STONE-D(ストーンD)』 、そして『SPRUNG(スプラング)』です。
今までメガネづくりに携わる様々な方を取材してきました。芸術や趣味、ファッション、カルチャーからインスピレーションを得てアイウェアデザインに落とし込むクリエイター。一方、そのクリエイターのデザインを職人的見地からプロダクトとして三次元化するエンジニア。各々の分野にプロフェッショナルな人がいるわけですが、その2つの才能を兼ね備えた天賦の才の持ち主が稀にいます。竹内也人さんは、その一人だと僕は確信しています。
CHECK!!
職人としてのDNAとデザイナーとしての感性を兼備した鯖江の“奇人”
竹内さんは1964年設立の老舗フレーム工場「サン・オプチカル」の三代目。子供の頃の遊び場は工場であり、遊び道具は工作機械。それでいてスノーボードやスケートボードなどの横ノリスポーツカルチャーにも傾倒し、とかく閉鎖的になりがちな職人気質の世界にいながら外界を自由に行き来している御仁です。また彼の会社は分業が多い鯖江でも珍しく一貫生産を貫徹するピュアメイドインジャパン。そんな背景から彼のブランドは生まれています。
大人のライフスタイルを色濃く投影したサングラスコレクション
STONE-Dは彼の生きる糧でもあるアクションスポーツやアートに刺激を受けたサングラスライン。大人の不良を匂わせるスタイリッシュなモデルから、アングラな雰囲気を醸すモデルまでデザイン領域は広く、大胆なカットやシェイプはストリートファッションとの親和性アリアリ。しかも細部に目を凝らすと、そこにはしっかり職人技が生かされています。横ノリの感性と職人のこだわりが凝縮された、まさに竹内さんの脳内を具現化したようなもの。
ハンドメイドのインダストリアルデザインを体現するオプティカルコレクション
STONE-Dが「動」なら、ビジネスでも掛けられる眼鏡のライン、SPRUNGは「静」。とはいえ平凡や無難という意味ではありません。奥行きあるカッティングや、張り出した智から弾性を生かしたチタンのヒンジ&テンプルの組み合わせは、デザインと機能がしっかり手を繋いだ工業デザインの好例と言えるでしょう。しかも1本ずつ手作りなのも見逃せないところ。いい意味でクセがあり、クリエイティブなお仕事の方々に愛用されているようです。
アーティストとして、メガネ職人として全身全霊を込めたアートなメガネ。
そして竹内さんを凡人ならざる存在としているのが“一点モノ”のアートワークです。商業写真家にしても文筆家にしても商品とは別に“作品”を手掛ける人がいます。竹内さんもアーティストとしての才気、職人としての技術をフルスウィングで入魂した作品を輩出しています。工場隣接のギャラリー「奇人眼鏡展(※要予約) 」でそれらに触れることができます。ぜひ一度、足を運んでもらいたい。あるいはあなたも第三の目が開眼するかもしれませんよ。
HOME PAGE http://sunoptical.co.jp / http://www.stone-d.co
FACEBOOK https://www.facebook.com/takeuchi.narito
INSTAGRAM https://www.instagram.com/stonedeyewear/?hl=ja / https://www.instagram.com/sprung.eyewear/?hl=ja
実川 治徳
フリーランスライター
アパレルブランドの店長、プレスを経て2000年からフリーランスライターとして活躍。アイウェアやファッションに特化した記事をメディアに寄稿し続ける。2005年から眼鏡の専門誌として知られるワールドフォトプレス発行の「モードオプティーク」にて、アイウェアの国際展示会SILMのリポートを執筆し、世界中のデザイナーと親交を深める。2016年からはネコ・パブリッシングがバックアップする「V MAGAZINE JAPAN」の編集・執筆を手掛け、世界のアイウェアシーンを発信する。フリーランスのフットワークの軽さを活かし、現在はメガネブランド「GROOVER SPECTACLES」の北米向けセールス&プロモーションを担当。
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