
毎日、メガネ屋 2024.03.13~テレビ・映画撮影現場のレンズの反射と写り込み~
20年以上前から、映画やテレビドラマの小道具として使われるメガネレンズのカスタマイズを頻繁に承っております。以前は特撮っぽいミラーレンズへのレンズ交換や、キャラモノのカラーレンズの交換などが多かったのですが、最近はカメラの進歩が著しく「レンズの反射」や「写り込み」の対策を依頼されることが増えました。
CHECK!!
メガネのスタイリングみたいな華やかな仕事は来ない
国内外のメガネブランドに日本でもかなり詳しい方だとは思うのですが、「メガネをスタイリングしてください」みたいな仕事は来ません。俳優さんの個性を台無しにしてしまいそうなキワどいメガネばかり選んでしまうと思うので、自分でも向いていないと思います。どのドラマや映画を観ても王道的な無難なメガネがスタイリングが多いので、この先もお呼びは掛からないだろうと諦めています。
究極に反射を抑えるレンズ探し
撮影で使うレンズと聞くと普通のメガネ屋さんでは、度付レンズに使われる”一般的な反射防止コート”を入れて撮影用メガネとして用意されることがほとんどです。度付レンズ用を”度無し”として使うのだから、それなりにプロっぽい仕事のように感じますが、もはやこのレンズコートではダメなのです。カメラの性能が良すぎてしまうんです。
この”一般的な反射防止コート”が使われたメガネでカメラテストした後に、反射問題が発覚し私のところへ相談に来ます。ほぼ全ての場合で2~3日後に本番撮影を控えており、駆け込み的に対応している日々です。
撮影小道具のメガネはスタイリストさんが選ぶ?
俳優さんが掛けられるメガネはスタイリストさんが選ばれることが多くあります。そのスタイリストさんが、メガネ屋さんに反射の相談をして”一般的な反射防止コート”を入れて納品される流れです。
多くはありませんが、メガネ専門のスタイリストさんが担当する場合もありますが、専門の方がスタイリングして用意されたメガネも容赦なく私のもとへ相談に来ます。同じ業界人であってもレンズの知識は全く別のところにあります。反射に関してさらに奥が深く専門外ですから仕方がありません。
私は長年このようなメガネを作ってきたので、照明・カメラ・小道具の裏方の方よりご依頼を受けます。華やかな”スタイリスト”の人々は、もう丸投げです。撮影後のポストプロダクションで、反射を消す事も出来るようですが途方もない労力を割かなくてはならないので、最初から反射を軽減させたいのです。
レンズメーカー各社の低反射レンズを比べてみた
低反射と謳われているA社とB社のレンズを比べてみました。一般的な反射防止コートの”グリーンな反射光”ではなく、どちらもブルーに表面が反射します。確かにグリーンの反射光よりも、反射は低減しているのですがイマイチです。
ウェブサイトには「画面越しだからこそ相手にきれいに見える」などと書いていますが、提示されているデータは「視感度透過率」です。つまり自分が見るときにPCモニターなどが反射するかの数値。相手から見られるときの反射ではありません。
相手から見られるときの反射は「JIST7334の反射率」で表すようなのですが、この数値はどのメーカーも公表していませんでした。普通のメガネならば自分から見る反射が低減される方が大事ですから、これで良いと思うのですが何かモヤモヤします。一方的な勘違いな気がしてきましたが、皆さんはどう感じますか?
遂にパーフェクトな低反射レンズを見つけた!
海外でも同じような事例が無いかなと探していたところ、「Glasses for the TV & Film Industry」というサイトがありました。英文を読んでいると「Recently invented in Japan」との一文が!!!!!。マジか!つまり「最近日本で開発されたよ」と。
結果から言いますと、もうこのレンズは作られていませんでした。恐らく先の英語サイトは少し古い記事なのでしょう。しかし、メガネ業界には表に出ないジェダイクラスの方々がいまして、相談したところ何とか手に入れることに成功しました。撮影用メガネレンズの決定版と言って良いレンズです。
多くの偉大な専門家の方々の力を借りてしまったので、メーカーなどの詳細をお話しする事が出来ず申し訳ございません。
このところ高度なメガネに関するご要望が多く、頭を悩ませています。20年来こんな事をやり続けて知識を積んでいますが、これが何になるのだろうか分からなくなってきました。この知識をパスする人もいません。寂しい限りです。
もっと簡単にメガネ屋をやった方が儲かると思うのですが、どっかで「それは違うんだよな」と思ってしまう自分がいてそれが出来ないのです。
ある種の諦めなのですが、特撮などで使うような”見たことのないメガネ”を作るプロジェクトを昨年からスタートさせました。春の展示会で発表しますが、日本のテクノロジーでは実現出来なかったので、海外のラボに協力を仰ぎました。全てのアプローチを初めて挑戦する方法で行っています。
ドラマや映画で使用するような特別な1本を作る「MN DIMENSIONS」というブランドを創りました。すでに最初のプロダクトを作ったのですが、まぁまぁパンチが効いておりますのでお楽しみに。
note.でも連載中です。

中島 正貴
有限会社スクランブル 代表取締役
1999年にメガネ業界に入る。新宿の紀伊国屋にあった三邦堂(閉店)でドイツ式両眼視測定を学ぶ。2006年よりメガネブランド「GROOVER」を立ち上げ、国内外の展示会へ出展する。2011年より世界初のレンズカスタムレーベル「GOODMAN LENS MANUFACTURE」を立ち上げる。2016年より世界のアイウェアシーンで有名なアイウェアマガジン「V.MAGAZINE」、アイウェアエキシビジョン「V.O.S」の日本開催権を取得。ネコ・パブリッシングの協力により「V.MAGAZINE JAPAN」の刊行と、「V.O.S TOKYO」を開催する。2021年には日本発のスポーツサングラスブランド「XAZTLAN」を発表。2022年、メガネの「ホントにミニマムな国際展示会RAMBLE」を7年ぶりに復活。2023年、5坪のメガネ屋「陽ハ昇ル GROOVER×XAZTLAN」を表参道にオープンさせるなど精力的に活動中。
職歴
・メガネナカジマ代表
・陽ハ昇ル GROOVER×XAZTLAN オーナー
・GROOVERデザイナー
・GYARD主宰
・XAZTLAN(ザストラン) CEO
・東京セイスターグループ理事
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