第九話 さて、

はてさて、私はどうしようかな

母に送ったメッセージの最後にそう綴
山手線にグラグラと揺られながら立っている。
もう5年も東京にいるのに未だに山手線には振り回されてる気がする。

今日は大阪でナレーション撮りで朝イチ新幹線に乗る。
6時半だというのに人だらけの新幹線には驚く。
自分の職種も相まってコロナ明けの実感もあまりないが、ふとした所ではすぐに以前の姿に戻ることに気づく。
交通機関というのはほんと凄いなぁなんて思いないながら人をかき分け自分の席に座る。

深夜ラジオを終えてそのまま大阪へ向かうコースの私は
疲労と謎の興奮状態により過敏になっていた。

朝イチだし眠いんだけど、周りの人がまぁまぁうるさい。

楽しそうにお喋りしてる二人組マダム。
タイピングの音がやたらデカいサラリーマン。
イヤホンからズンドコ音楽が漏れてる女の子。

皆、モラルの範囲を保ったまま、まぁまぁうるさい。
「ちょいと静かにしておくんなまし。」と言えるタイプでもないので、はてさて、どうしようかな。と考える。

そう言えば、母にもさっきこれ送ったなぁと頭の片隅でふわふわ考えながら、眼鏡をかけ、興奮状態を利用し作業することを試みる。

眼鏡ってのはすごい。
かけると頭も、
「はいはい作業するのね、分かりましたよ。」
と言わんばかりモードに入ってくれる。
有難い。

パソコンを取り出して、英語の字幕の調整作業する。
こーゆーちょこまかしたやつ片すのが気持ちいい。
新幹線の窓をチラッとみると眼鏡姿の自分が映る。


Eque.Mがデザインしたハーフリムのメガネ。
ハーフタイプの眼鏡がすごく可愛い。
アンダーリムも欲しくなる。
物欲は食欲の様にやってくる。
朝来て、昼来て、夜も来て
買い物依存症なのか?と不安になるぐらい。
グッと堪えて作業を続ける。

⌘C、メモを開く、⌘V
これだけを続ける。
コマンドC、memoを開く、コマンドV
単純な作業だけどちょっと腰が折れる。
Commandしー、メモをHiraく、Commandブイ硬い新幹線の椅子とは裏腹に頭フワフワ鈍ってきて…

プツッと電源切れたように瞼を閉じて、再び目を開ければもう新大阪だった。

急いで新幹線を降りて、現場に向かう。
セカセカと動き回る。

仕事を終え、またすぐ新幹線にのる。
夕方から撮影があって蜻蛉返り。
帰りの新幹線でも、寝つけなさそうなので
眼鏡をかける。
はいはいと、また頭のスイッチが入る。

ふと窓を見ると、メガネ姿の自分が映る。

やっぱりアンダーリム欲しい。

はてさて、どうしようかな。

 

 

 

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