ブルーライトカット眼鏡&レンズは本当に効果がないのか?

4月14日付で「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」という発表がありました。日本眼科学会・日本眼科医会・日本近視学会・日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会・日本視能訓練士協会の6団体からなる連名であり、「医師会」「学会」と書かれると、物凄く権威的です。

その内容は↓
https://www.gankaikai.or.jp/info/20210414_bluelight.pdf

メガネナカジマでも数多くのブルーライトカットメガネを販売してきましたので、お買い求め頂いたお客様に説明するべくこの記事を書いております。また「一介の眼鏡屋ごときが眼科医会の発表に何を言っているんだ!」というお叱りを受けそうですが、ちょっとこの発表内容は「小児に限ったことなのか?」、「小児以外も該当するのか?」という説明を丁寧にしませんと、正確さを欠いてしまうと思い補足する意味でも恐れずに書きます。

説明が足りない点や、間違っている点はコメントを下さいませ。ご協力をよろしくお願いいたします。

 

「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」としている

報道やSNSなどで見ると、少し過激に「ブルーライトカット眼鏡は”全て”効果がない」という論調が見受けられますが、眼科医会の発表では「小児の」と言っています。薬の定義では「小児とは、7 歳以上、15 歳未満の児とする。」とありました。

小児期の心身の発育には太陽光は好影響を与えるものだとされています。しかし紫外線が強すぎると当然良くないわけで、オーストラリアでは2007年に公立小学校で一部サングラスの着用が義務化されたり、紫外線の対策も必要なのです。

この紫外線とブルーライトと呼ばれる光の波長は、隣りに位置する光の種類なので近い関係にあります。これをカットしすぎるのには慎重にと言いたいのだと思っております。

今回の発表では体内時計についても書かれています。

体内時計を考慮した場合、就寝前ならともかく、日中にブルーライトカット眼鏡をあえて装用する有用性は根拠に欠けます。産業衛生分野では、日中の仕事は窓ぎわの明るい環境下で行うことが奨められています

ブルーライトカットメガネは、体内時計のメラトニンの増減による話を基に進んできた背景があります。
ブルーライトカットメガネを掛けるタイミングについて難しいなぁというのが、研究をされている先生たちの見解でした。しかし、これは割と以前から指摘されてきたことなので、何を今更と言うのが正直な感想なのであります。*偉そうにすみません

 

充分な太陽光を浴びないと、小児の近視進行のリスクが高まる

画像:JINSより
2016年に慶應義塾大学医学部の研究チームは、太陽光に含まれる「バイオレットライト」が近視の進行をおさえる可能性があることを世界で初めて発表しました。

これによって紫外線は近視抑制に効果が高いことが分かったのです。
今回の発表の「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」はここが起点になっていると考えています。

「外で遊ばない子供問題」に近い話だと思うのですが、デジタルデバイスの使用が増え外で遊ばなくなったみたいな話と、子供の体力問題とかの話にも近いのかなと思ってます。

で、私が不思議に思うことが一つあるわけです。

 

そもそもこの話は、バイオレットライトの話なんじゃないか?

これから色の話をするのですが、「虹」の7色を想像して見て下さい。
内側が「青」くて、外側が「赤」い。この色のグラデーションが色の波長の基本となります。

今回の眼科医会の発表でリリースに書いてあったブルーライトの定義は「波長 380~495nm 前後の青色成分」とあります。波長のグラフで言うところのこのあたり↓

近視抑制に効果があると言うバイオレットライトの波長は「360〜400nmの紫色の光」でここ↓。

一般的な紫外線カット機能のある度付クリアレンズ(ブルーライトカットではない)で、紫外線カットしている波長はここ。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、よほど時代遅れであるか、どこで作っているか分からないようなレンズでない限り、一般的な度付クリアレンズであっても紫外線と一緒にバイオレットライトをカットしてしまうのです。つまり近視抑制に作用する光は、「普通のUVカットレンズでもカットしちゃうじゃん問題」なのではないかと言う点で私は不思議に思ったのです。

そこをカットしないようにするレンズが「JINSバイオレットプラス」というレンズですね。
「JINSバイオレットプラス」の波長はこれ↓。バイオレットライトの論文を基に開発されたレンズです。

 

紫外線による弊害をどう考えますか?


この理屈から言うと、バイオレットライトが含まれる紫外線をカットしちゃうと近視抑制に効果がなくなってしまう。じゃぁ紫外線によるデメリット側はどう考えるんですか?ってことになると思うんです。「太陽光に浴びよう!」となれば紫外線カットを外すことは非常に難しい選択と言えます。

紫外線には角膜・水晶体・網膜にダメージを与えると言われていたり、最近では眼から侵入した紫外線によってシミが生成されるメカニズムが分かってきています。大人にしろ子供にしろ、出来るなら紫外線から眼を守りたいですよね。

 

この発表は何が言いたかったのか?

紫外線やバイオレットライトまでは何らかの効果・作用はあるのだけど、ブルーライトの波長までカットして効果あるの?小児の場合は過度にブルーライトカットをしなくても良いのでは?それほど恩恵がありませんよね?ということなんでしょう。

そして
「それほど有害とまで言えるようなブルーライトは、デジタル機器から発生してませんよね?」
という問いがあるわけです。

けど何度も言いますが、近視抑制に作用するバイオレットライトの波長は「360〜400nmの紫色の光」で、普通のメガネに付いてくる度付きレンズでもカットしてしまうジレンマ。

こういった文脈を一般の方は理解できるはずもなく、「ブルーライトカットは意味ないですよ」っていうミスリードがSNSなどでも起こってしまっているのではと考えています。

 

じゃぁ本当に効果があるのか?


っていうのが気になるところだと思うんです。
恐らくジンズさんが10年ほど前にブルーライトカットレンズを発売したと思うのですが、私はそれより前からこの件についていろんな論文を読んで自身でも店頭でも試行錯誤してきました。古くは2008年に「OAレンズ」と呼びながら書いたブログの記事がありました→08.1.21 consider

例えばパソコンやスマホの画面の明るさを下げて使用されている方が多いと思うのですが、この原因って「眩しさ」なのはすぐに分かると思います。この眩しさを感じる人間のセンサーが、どうやらブルーライトの波長域にあるぞってことが分かってきています。

NHK「ためしてガッテン」でもやっていた、光過敏の特集で「内因性光感受性網膜神経節細胞」という細胞が紹介されました。どうやらこの細胞が光を感知して何らかのストレスサインを出しているようなのです。
これは脳神経系のお話で、日本の眼科領域ではあまり話題にならない話です。海外で眼科は脳神経科と密接に関わっていますが、日本は分断されている印象があります。

近年のこういった研究・論文から、見える光を限定してあげることによって、ストレスを緩和させる試みがされています。
照明の世界では早くから「アンチグレア」などの研究がされていましたし、私が調べ始めた当時はCRTモニターから発せられる波長がトピックでした。

こういった観点からも、全世代的にブルーライトカット眼鏡に効果が無い・意味がないと結論づけるにはというのは性急すぎると私は考えています。そして「眩しさ低減」や「コントラストアップ」に関して言えば、コンタクトレンズではなかなか出来ないので、ブルーライトカットメガネは悪くない選択だと思っています。*あくまで私信とさせて下さい。

 

論文を全てを読んでみた

今回の発表で論拠とされた論文を全て読みました。米国で発表された論文も約35ドル出して買いました。

最新の論文とされたアメリカの論文は、メルボルン大学(オーストラリア)で行われた120人を対象とした論文で、使用されたブルーライトブロック(日本以外ではそう呼ばれています)レンズのカット率も書かれていました。
米国の論文にしては治験者数が少ないなと思ったり、テストに使われたブルーライトブロックのカラーが薄いイエローだったので、後の被験者への質問で色の影響があるなと感じた回答もありました。

JINSさんがブルーライトカットメガネを出された時に、イギリスだかスコットランドだかの「体内時計」の論文を基にされ製品化したと記憶しています。その当時の論文も読んでいたのですが、実際に発売されたブルーライトカットレンズのカット率がだいぶ弱いなと感じたことを思い出しました。

その後、国内レンズメーカーから420nmまでの波長カットする東海光学のルティーナのようなレンズが登場してくるのですが、JINSさんもZOFFさんも未だ採用がされていないみたいです。

当時、ブルーライトのカット率を上げるためには、どうしても「色付きレンズ」になってしまいました。メガネナカジマでもより高い効果を得るには「色付きレンズ」が良いとお勧めさせて頂き、どうしても色が入っては困る方に「コーティングタイプ」を進めさせて頂いておりました。

5年ほど前にUV420系カットレンズが発売されてからは、ほとんど全てのブルーライトカットレンズはこちらを販売させて頂いております。見える光の波長を少しでも絞っていくことは、眩しさ対策の意味でも有効であると考えており、そのことについては弱視学会の方も、

「子どもたち(大人もですが)の眼鏡は医療用器具で雑貨ではありません。「パソコンを見るならブルーライトカット」ではないのです。色付きの眼鏡が必要な子ども(大人)もたくさんいます。そういうメガネをかけて登校する子がいることも知ってほしい」

との見解を示されています。つまり拡大解釈すると「眩しさは別の問題ですよ」と言っている気がします。

 

デジタルデバイスの「眩しさ」対策は必要だと思う

私見ですが敢えて意見させて頂くと「子供であってもデジタルデバイスの、眩しさ対策は必要だと思います」。これは画面の明るさを下げることによって改善できるかもしれません。

「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」問題は、言い換えると太陽光を浴びる時間が少なくなった問題であると思います。これを”外でもっと遊べば良いじゃん”という短絡的な回答では解決できないことも承知しています。

だからこそ眼科医会も”慎重意見”としているのでしょう。

ブルーライトカット眼鏡の話題を通しながら、そういったデジタルネイティブ化している子供達と、世界的な近視の強度化の問題を考えていくキッカケとなればと思います。眼鏡屋はその問題と共にあるべきだと考えています。

 


メガネナカジマ
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