メガネをより快適に使えるレンズコーティングの話
早いもので、あと数週間すると今年も折り返しに。上半期を振り返るにはまだ少々早いのですが、今年は様々な媒体でレンズのことを書く機会が増えたなと感じています。
正直なところ、レンズについてはこれまで雑誌に企画を提案しても「レンズの話は専門的過ぎるから」と敬遠されがちでした。たしかに誌面を作るにしても、メガネのレンズはその多くが無色透明。結局はレンズメーカーさんが用意している画像や、何かしらの数値を表すグラフで構成することとなり、オリジナリティが出しづらい。結果カタログ的になることで、むしろ「レンズの話は専門的」というイメージを強化してしまう可能性もあるわけです。
もちろん設計などの話は少々専門的かもしれませんが、そのレンズにより享受できるメリットは、自分の生活の質に密接に関わることなわけで。むしろ身近な話だと思うんですけどね。それを伝える場がなかなか得られないことを、もどかしく思っていました。
では、なぜ最近になりレンズを取り上げる機会が増えたのか。その理由のひとつは、在宅勤務でコンタクトからメガネに切り替えたり、パソコン作業の長時間化で見えづらさを感じたりしている人が増え、“見え方”についての関心が高まったこと。また、もう一つには「新しい生活様式により現在多くの人が感じている“日々の不便”を、“わかりやすく”解消してくれるレンズコーティングが登場している」ことが挙げられると思っています。
CHECK!!
そもそもコーティングとは何か
じつはメガネレンズの表面には、何層にもコーティングが施されています。肉眼では見えない数ミクロンという薄い膜を幾重にも重ねることにより、快適に使える便利な機能が不可されているんです。たとえば、レンズの反射を防止したり、キズや水ヤケから守ったり、汚れを付きにくくしたり、などなど……。その機能は多岐に渡っています。
これらのコートには、標準でついているものもあれば、オプションとして有料でつけられるものもあります。そう、レンズを購入する際にコーティングをプラスすることで、さまざまな機能を付加することができるわけですね(対応するレンズが限られている場合もありますが)。
そして今、コロナ禍で私たちの生活が変化するなか、日々抱えるストレスを解消してくれるコーティングが各社から登場しているんです。
反射を抑えてオンライン映え
たとえば、目に見えてその効果がわかりやすく、眼鏡ユーザーの間で話題になっているのが、東海光学の「ノンリフレクションコート(NRC)」です。こちらは、レンズに映り込む光の反射を抑えてくれるレンズコーティング。従来のマルチコートも反射を防止するコーティングですが、NRCはさらに反射率を大幅に低減。そのため、オンライン会議のときなどもレンズに光が映り込みにくく、目元をすっきり見せることができるんです。
ちなみに私はこのNRCを愛用しているのですが(トップ画像のメガネ)、ZOOM会議のときはもちろん、Instagram用に着用画像を撮影するときも、反射を気にせずに好きな角度で写真を撮れるので、とても助かっています。
煩わしいレンズの曇りを抑制
そして、マスクが必須となった今、改めて注目を集めているのが防曇コーティングでしょう。以前からあったものですが、多くの人がマスクの着用によってレンズが曇るのを煩わしく感じるようになった今、使ってみようという人が増えているようです。
とはいえ、従来防曇コートというと定期的なメンテナンスが必要だったり、メンテナンスフリーであっても拭き取りにくさを感じるなどと言われていて、取り扱いが難しそうなイメージがありました。ですが、現在のように頻繁にマスクをするとなれば、そうした懸念より曇らないメリットのほうが大きいかもしれません。実際に、これまで「防曇コートより、曇り止めを塗ったほうが……」と思っていた私も試してみたくなっています。
なかでも今気になっているのは、今年の4月にHOYAから登場した「KUMORI 291」という防曇コートです。特別なメンテナンスの必要もなく、表面の拭き取りやすさも特徴なのだそう。ただし、商品説明には“反射防止コートがないのでレンズのギラつきが気になることがある”、との注意書きがあります。少々気にはなりますが、そのギラつきを活かすべくレンズに薄色のカラーを入れても良いかなと思ったりしています。
そのほか、2月に登場したツァイスの「デュラビジョン アンチウイルス プラチナム コーティング」は、抗ウイルス性能および抗菌性能をレンズに付与できるというもの。これはまさに、時代のニーズに応えたものだと言えるでしょう。
これまであまりコーティングを意識したことがなかったという人も、次にメガネを作るときはぜひ検討してみてはいかがですか? とはいえ、何でもつければいいというものでもないので、必ずお店で相談を。うまくハマれば、普段感じているストレスを軽減できるかもしれませんよ。
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伊藤 美玲
眼鏡ライター
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』『眼鏡Begin』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN』『文春オンライン』『めがね新聞』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆している。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』ではメガネの世界の案内人として登場。眼鏡の国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査委員も務める。
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